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南山大学の「ここ」を未来に届ける
『南山大学をはなす』

教員座談会 vol.3前編

経済学部 経済学科 梅垣 宏嗣さん
総合政策学部 総合政策学科 狭間 諒多朗さん
国際教養学部 国際教養学科 篭橋 一輝さん
体育教育センター 飯田 祥明さん

教員座談会 vol.3前編
コンフォートゾーンを、出てみる

教員座談会vol.3は、経済学部、総合政策学部、国際教養学部、体育教育センターの先生方にお集まりいただきました。それぞれの専門領域からの視点や南山への想いがクロスする、一期一会のトークセッションをお楽しみください。

聞き手

コピーライター 村田真美
(株式会社mana)91B154

取材日

2025年6月20日

左から狭間さん、飯田さん、篭橋さん、梅垣さん

研究への情熱、教育へのまなざし

南山大学100周年に向けて「未来へつなぐ」座談会企画の教員編vol.3、今回は4名の先生方です。それぞれの自己紹介を、狭間先生からお願いします。

狭間

総合政策学部 総合政策学科の狭間です。南山大学には2019年の4月に着任し、専門は「社会学」です。「若者論」をテーマに若者の価値観や考え方、その格差や階層差が何によって起きているのか、という研究をしています。

続いて飯田先生、お願いします。

飯田

体育教育センターの飯田です。体育教育センターは学部とは別の独立した組織で、主に共通教育科目である基礎体育やスポーツ実技科目を担当し、学生の体力向上や健康づくりのサポートを行っています。着任は2017年、ちょうど南山でクォーター制が始まった年です。専門分野は、広くいうとスポーツ科学です。もともと大学院ではバイオメカニクスといって、人間の動きを分析する研究をしていたのですが、『現場と研究の橋渡し』をコンセプトに掲げる「日本バスケットボール学会」の立ち上げに関わった縁もあり、スポーツ現場により近い分野へとシフトしてきています。現在はバスケットボール派生のスポーツ、ネットボール(イギリス連邦諸国で人気のスポーツ)や、コーフボール(オランダ発祥のバスケットボール派生競技)に関わることをメインに研究しています。

飯田先生が受け持つ授業は、実技が中心なんですね。

飯田

はい、体育の授業で、バスケットボールやネットボールなどの球技を行っています。ネットボールはバスケと似たスポーツなのですが、ドリブルなしでパスだけでつなぎます。ポジションによってエリアが分かれているため役割分担が明確で、接触プレーもないので初心者でも安全に楽しめます。チームプレーでコミュニケーションが欠かせないところも体育の授業向きなんです。他にもストリートダンスを教えています。

飯田先生ご自身もダンスをされるんですね!すごいです。南山にはどんな経緯で来られたのでしょうか。

飯田

前任校が上智大学で、もともと上南戦では交流させていただいていたんですが、縁がつながり南山へ来ることになりました。

そんなつながり方もあるんですね。続いて篭橋先生お願いします。

篭橋

国際教養学部 国際教養学科の篭橋です。2012年からプロジェクト研究員として南山社会倫理研究所(以下、社倫研)に関わり、2015年に第一種研究所員、2018年に国際教養学部に異動して現在に至ります。専門は環境経済学という分野で、「環境保全と、幸せや経済活動をどう両立させるか」ということを研究しています。なかでも「ローカルな環境資源をどのように持続的に管理していくか」という、仕組みや制度に関心があります。オーストラリアに「ランドケア」という「自然を地域の住民で守っていく取り組み」があるのですが、その研究をするために、南山の教員留学制度を利用してオーストラリア国立大学へ1年半ほど行っていました。今年の3月に帰国したところです。

オーストラリアと篭橋先生とのご縁について、もう少しお聞かせいただけますか?

篭橋

2012年、私が南山大学へプロジェクト研究員として来た頃に遡ります。当時、社倫研の第一種研究員だったマイケル・シーゲル先生が「ガバナンスと環境問題」研究プロジェクトを立ち上げた際に、私はその研究員として参画しました。シーゲル先生から「ランドケアを知っていますか?」と声をかけていただいたことをきっかけに、興味を深めていきました。その後、シーゲル先生の導きでランドケアの本場、オーストラリアへ。現地の方々との交流が始まりました。2017年には彼らを招聘して社倫研で国際シンポジウムを開催したり、今回の留学でも大変お世話になったりと交流が続いています。

2019年に逝去されたシーゲル先生の後継者として、より研究を深められているということですね。シーゲル先生のお人柄も偲ばれるエピソードをありがとうございます。続いて梅垣先生、お願いします。

梅垣

経済学部 経済学科の梅垣です。正式な着任は2013年ですが、その前の2011年から「西洋経済史入門」という科目の非常勤講師をしていました。専門は西洋経済史、社会福祉形成史です。博士論文執筆時に、「福祉国家の父」と呼ばれるウィリアム・べヴァリッジというイギリスの経済学者の文献を調査していたところ、彼が「福祉をどんどん膨らませればいいわけではなく、自助努力も大切」といっていることに興味を持ち、この分野の研究を続けています。最近は歯科医療の研究もしていまして…

イギリス経済学者の話から、歯科医療ですか?

梅垣

17~18世紀くらいまでは砂糖自体が貴重なもので、イギリスでも虫歯というのは基本的に王侯貴族特有の疾患でした。当時の自画像をみると、扇子で口元を隠しているポーズを見かけますよね、あれは口腔状態があまり良くなくて隠している、とも言われているんです。大英帝国の植民地が増えて産業革命が進むと、砂糖を安く大量生産できるようになり庶民も味わえるようになりました。すると19世紀後半には虫歯の人がどんどん増えてしまったんです。口腔状態が悪いと何が起きるか?当時の兵士が使うマスケット銃は、薬莢を装填するには口で開ける必要がありました。でも虫歯で歯がないと兵士として戦えない、という冗談のような話もありまして、とにかく口腔状態が悪いのは良くない、ということで、大英帝国ではイギリスの初等学校で歯の検診制度が導入された、ということを研究したんですよ。あとは、社会保障における「詐病」や「不正受給」をキーワードに歴史を紐解いていくと、ジェンダーの不平等が見えてきたりと、興味関心はどんどん広がっていきます。

経済も福祉も、歴史と密接な関係がある。おもしろいですね!梅垣先生の語りに引き込まれました。

トークライブは想像の斜め上の展開に

今回も個性豊かな4名の先生方にお集まりいただきましたが、狭間先生の「若者論」をキーワードに、ちょっと質問をしてみたいです。皆さん、それぞれの学部で「南山の学生らしい」と感じる特徴など、あったりしますか?

梅垣

では私から。経済学を専攻する学生の特徴かも、という話なのですが…学生と社会保障に関する議論をすると、例えば貧困に関して「自己責任論」肯定派が一定割合で存在するんです。合理的な発想というか、経済合理性を追求するとドライな発想に行きつくというか。

ドライな発想はZ世代らしい特徴なのかもしれませんね。総合政策学部ではどうですか、狭間先生。

狭間

私の前任校が人間科学部というところで、‘文理の垣根を超えた学びを提供する’、いわゆる学際的な「4文字学部」という点で共通しているのですが、そこでは割と社会学、心理学、といったように、それぞれ専門分野ごとに人が分かれてしまう傾向がありました。でも南山の総合政策学部は、学生も教員も「混ざっている」気がします。国際政策、公共政策、環境政策と3つのコースがあって、私は公共政策の所属なんですが、うちのゼミ生は環境政策、国際政策コース所属の学生もいるので、ゼミ内を見渡しても学際的だな、と。

南山に総合政策学部ができて25周年を迎えますね。当初は、新しい学問というイメージでした。

狭間

中京圏初の学部ということでスタートし、25年の歴史を重ねてきました。総合政策学部の学びの土台には、「人間の尊厳のために」が息づいていると感じます。

飯田先生、いかがですか。

飯田

体育教育センターは、1年生の必修科目である体育の授業をどう運営するかということに主に注力しているのですが、保健センターとも連携しながら「とても丁寧に学生対応をしている」という印象があります。また、南山にはスポーツ関係の学部がないので、スポーツを専門で学んでいる学生はいないんですけど、講義で紹介するスポーツ科学に関する知見に興味を持ってくれる学生も多くいます。私は理工学部にも属しているのですが、理工系の学生から「スポーツを題材に研究をしたい」という申し出をいただくこともあります。経営学部とコラボしてスポーツプロモーションに挑戦している学生もいたりするので、それぞれの学部での学びがスポーツへの学術的な興味につながっていることも嬉しいです。

スポーツ×データサイエンスなど、今後の発展が楽しみです。国際教養学部についてはいかがですか、篭橋先生。

篭橋

国際教養学部だけではなく全学的な傾向かもしれませんが、海外、留学への心理的ハードルは低いというか、当たり前のようにどこかの国へ留学する、という学生が多いと思います。国際教養学部にはASU、アリゾナ州立大学への短期留学プログラムがありますし、ASU以外の場所へ行く学生もいます。私の学生時代には「留学するぞ」みたいな気合いが必要だった気がするのですが、今の学生はもっと留学に対してフランクな姿勢だと感じるのが、私が思う南山の学生の特徴です。

「最近の若者は内向き志向で、海外へあまり出たがらない」という話もよく耳にしますが、南山の学生にはあてはまらないようですね。山岸副学長がよく言われている「コンフォートゾーン」という言葉を借りると、留学はある意味そこからどーんと飛び出す冒険ですから、それなりにエネルギーが必要です。でも南山ではキャンパスのあちこちで留学生を見かけますし、外国人の先生方も多いので、日常的に留学へのハードルを下げる環境なのかもしれませんね。

狭間

学生に限らず南山の特徴として、研究に対してのプライオリティが高いことも挙げたいと思います。私の専門は社会学ですけど、総合政策学部には哲学から生態学、政治学、言語学、コミュニケーション心理学などさまざまな専門分野の研究者がいて、それぞれが「研究第一に取り組み、教育とつなげていこう」という雰囲気があります。実は「学際で学ぶ」には、先生方の専門がしっかりしていてクオリティを担保していないと、学部として成り立たないんです。

なるほど、研究を深めるための留学に行かれる先生が多いのもうなずけます。

篭橋

まさにそうです。そういえば飯田先生ももうすぐ留学に行かれますよね?

飯田

はい、ネットボールのことを研究するためにシンガポールへ留学予定です。ネットボールはもともとイギリス発祥の英国連邦諸国を中心に人気のスポーツなのですが、アジアではシンガポールが熱いんです。日本はバスケットボールの方が普及していますが、私は体育でやるならネットボールの方が良いのではないかと思っているくらいです。あと、海外からの留学生の中には、日本でもネットボールをやりたいと思っている学生が結構多いんですよ。

狭間先生は、行くとしたらどちらへ留学したいですか?

狭間

イギリスですね。若者に対するケア、社会保障を含めた制度は日本より充実しているので、その勉強をしに行きたいです。

『YAMAZATO60』プロジェクト、見てました?

ここからは昨年度のYAMAZATO60についてのご意見や感想などをお聞きしていきたいと思います。篭橋先生、いかがでしょうか。昨年度はオーストラリアに留学中でしたので、そもそもご存知ないかも?

篭橋

全く知りませんでした。春に帰国して、今年度は「+」をやっているよと聞いて、そこで初めてYAMAZATO60のことを知った、という感じです。改めてWEBサイトを見て思ったのが、YAMAZATO60+をプラットフォームとしてさまざまなプロジェクトが走っていて、YAMAZATO60の傘のもとで有機的なつながりになっていっていると思いました。

オウンドメディアのような存在に育つといいですね。梅垣先生はいかがですか?

梅垣

YAMAZATO60サイトを入り口に、私は留学生別科50周年の記念サイトが目についたんですけど、このキャンパスに集った多国籍の留学生の歴史が50年積み上がっていることも素晴らしいと思いました。

狭間

私もそんなにしっかり見てなかったのですが、キャンパス内のあちこちにポスターが貼られていて、それが定期的に変わっていくので総政の学部長はいつかな、なんて思いながら眺めていました。今回の座談会をきっかけにWEBサイトを見て、これからもコンテンツがどんどん増えそうだと楽しみになりました。

YAMAZATO60プロジェクトは、キャンパスという空間を行き交う人々の営みを発信していこう、という取り組みなのですが、「山里」とキャンパス所在地をプロジェクト名に冠したことはどう思われますか?

狭間

私が南山に着任した時、「ここはレーモンド建築で…」と詳しくキャンパスの説明をしていただいたことがとても印象に残っています。キャンパスを大切にしている大学だとずっと思ってきたので自然な流れかな、と。

梅垣

このキャンパスのブランディングには、そういったストーリーを発信していくことがすごく大事だと思っています。例えば高校生がキャンパス見学に来て、その感想が「あれ、南山大学のキャンパスって意外と狭い?」で終わってしまってはもったいない。だからこそ、歴史やレーモンドから引き継いだイズム、ストーリーをしっかり伝えていけたらいいなと思います。

飯田

私が南山に着任した頃に、建築系を専攻していた家族にレーモンド建築のことを話したら、「えっ!すごいじゃん」と驚いていました。「南山には建築学科ってないよね?もったいない。でもそこはもっとアピールしたらいいのに」と言われたことを思い出しました。YAMAZATO60プロジェクトでレーモンド建築を巡るキャンパスツアーなども始まって、すごくいいなと思います。

新たな視点をありがとうございます。建築+スポーツ、デジタル+デザインなど、文・理の垣根を超えて融合した新しい学部ができたら、なんて妄想してしまいました。飯田先生は、YAMAZATO60プロジェクトのことはご存じでしたか?

飯田

実は、じっくりWEBサイトを見たのはこの座談会企画の話をいただいてからなんですが…インパクトがあったのは、各学部長ページですね、ビジュアルデザインがカラフルで、サングラスをかけていたり民族衣装をまとっていたりと、それぞれの先生方の特徴が出ていて魅力的でした。私はスポーツや体育に関わっているので、岡田副学長と吉田学生部長が上南戦について語っていたインタビュー記事が特におもしろかったです。じっくり読みました。

‘オレンジのバラ賞’というご提案もありましたね!

飯田

お二人とは、普段からスポーツ関連のことで話す機会が多いので、彼らが外へ向けて南山スポーツについて発信している姿を見て嬉しくなりました。あと、今回こうやって私を座談会に呼んでいただいて思ったのが、スター選手ばかりでなく、若手職員や支える側にもスポットを当てるプロジェクトなんだな、と感じましたね。

私は、キャンパスでキラリと光る方々へのヒーローインタビューだと思っています。そこに肩書きなどは関係ないですよね。狭間先生、篭橋先生、飯田先生、梅垣先生とのお話はまだまだ続きます。後編もお楽しみに。

Profile

経済学部

梅垣 宏嗣 講師

専攻分野

西洋経済史・社会福祉形成史

主要著書・論文

  • 「ベヴァリッジによる『自由社会のための計画化』の変容 ―『友愛組合活用論』から『ヴォランタリー活動促進論』へ―」『社会経済史学』、社会経済史学会、第75巻第6号、2010年3月。
  • 「両大戦間期イギリスにおける労働と福祉について ―国民健康保険制度の運営実態分析を中心に―」『経済科学』、名古屋大学大学院経済学研究科、第60巻第3号、2013年3月。
  • 「両大戦間期イギリス国民健康保険制度における認可組合自治と被保険者選択」『南山経済研究』、南山大学経済学会、第28巻第3号、2014年3月。

将来的研究分野

社会福祉形成史における包括性と自律性について

担当の授業科目

「西洋経済史入門」、「西洋経済史A」、「西洋経済史B」、「経済演習Ⅰ」、「経済演習Ⅱ」

Profile

総合政策学部

狭間 諒多朗 准教授

専攻分野

社会学

主要著書・論文

  • 『分断社会と若者の今』大阪大学出版会(共編著、2019年)
  • 『格差社会のなかの自己イメージ』勁草書房(共著、2018年)
  • 『「地元」の文化力:地域の未来のつくりかた』河出書房新社(共著、2014年)
  • 『コロナの影響と政策:社会・経済・環境の観点から』創成社(共著、2022年)

将来的研究分野

計量若者論

担当の授業科目

「社会学概論」「社会と文明」「社会調査法」ほか

Profile

国際教養学部

篭橋 一輝 准教授

専攻分野

環境経済学、地球環境学

主要著書・論文

  • 『水と大地の環境学―持続可能性の根を求めて―』(単著、晃洋書房、2024年)
  • "Factors Determining the Resilience of Local Communities: A Comparative Analysis of Landcare and a Pond Irrigation System in the Sanuki Plain"(In: Building Global Sustainability through Local Self-reliance: Lessons from Landcare, 単著, ACIAR, Chapter 18, 2022年)
  • 「持続可能な発展論から見たランドケアの原理的特質——土地劣化問題への対応に注目して」、『社会と倫理』、第33号、pp. 3-15.(単著、2017年)
  • 「クリティカル自然資本と持続可能性—到達点と課題—」、『環境経済・政策研究』、第10巻2号、pp.18-31.(単著、2017年)
  • “The Effects of International Trade on Water Use”, PLOS ONE, Vol. 10, Issue 7, e0132133, pp. 1-16.(共著、2015年)

将来的研究分野

幸福の経済学、自然の価値論、持続可能な地域発展論

担当の授業科目

「サステイナビリティ・スタディーズ概論 / Introduction to Sustainability Studies」
「サステイナビリティと社会システム / Sustainability and Social System」
「経済学B / Economics B」

Profile

体育教育センター

飯田 祥明 准教授

専攻分野

スポーツ科学(バイオメカニクス、トレーニング科学、コーチング学)

主要著書・論文

  • 『バスケットボール学入門』(共著)
  • 『KINECT v2 センサーを用いたフリースロー様動作中のマーカー式関節角度測定の精度検証』(共著)

将来的研究分野

バスケット型スポーツに関する研究

担当の授業科目

基礎体育A・B(ネットボール、ストリートダンス等)
スポーツ実技(バスケットボール等)、スポーツ科学論Ⅱ