
南山大学3研究所合同企画
(YAMAZATO60+関連イベント)
レーモンド建築で構成された「南山大学」の歴史とその美しさについて、本学学生・教職員はもちろんのこと、建築と自然環境の問題や建築と空間を巡る哲学・倫理学に関心のある学外の学生や研究者に伝えるために、南山大学3研究所が主体となって各種イベントを企画しました。
全体趣旨
2024年4月に公表された南山大学学長方針では、ポストコロナにおいて「新しい状況」を作り出す努力の必要性が求められており、とりわけ本学の使命として3Ds(Dignity, Diversity, Dialogue)の実現による学内改革の加速・推進が希求されると謳われています。3Dsの筆頭に掲げられているDignityについては、南山アイデンティティのさらなる浸透の必要性が強調され、その第2項では、「2024年に『山里キャンパス』移転後60年を迎えることを機に、レーモンド建築で構成されたキャンパスの歴史とその美しさについて、学生を中心に広く国内外の人々に伝える催しを企画・実施する」との目標が掲げられています。

折しも、学長方針が公となったタイミングで、2015年の新棟建築に始まるレーモンド建築の再生保存事業により、本学が「2024年日本建築学会賞(業績)」を受賞したことが伝えられました。この輝かしい成果を知り、レーモンド建築をテーマとした企画を、本学に存在する3つの研究所が主体となって催すことができないかと考えた末、このほど、山里キャンパス60周年記念事業の一環として、3研究所(研究所総合委員会)による企画を計画いたしました。この企画の目的は、2024年度学長方針にあるように、山里キャンパス60周年記念事業の一つとして、「レーモンド建築で構成されたキャンパスの歴史とその美しさについて、学生を中心に広く国内外の人々に伝える催しを」、本学の3研究所が主体となって企画することにあります。
開催時期は2025年5月16日(金)・17日(土)です。レーモンド建築の魅力に即して本学の歴史やキャンパスの美しさを知っていただくと同時に、世界的レベルの研究で知られる3研究所の活動やその成果を分かち合うことで、3つの研究所が開かれた研究組織体として本学に存在し、南山大学は日本屈指の研究機関でもあることを知っていただければと願っております。

具体的な催しとして、2019年に出版された『日本におけるアントニン・レーモンド1948−1976知人たちの回想』の編者の一人である立命館大学ヘレナ・チャプコヴァー准教授による講演会や、ノルウェー科学技術大学で建築学と環境の問題を研究しておられるベンディク・マヌム教授とグロ・ローヴランド准教授をお招きして「建築と自然」に関するワークショップを南山宗教文化研究所の企画として行います。また、「建築と空間」について考える哲学カフェを社会倫理研究所が中心となって企画し、さらに、人類学研究所の企画として、関西学院大学の濱田琢司教授をお招きして、野外企画「南山大学レーモンド建築をめぐるキャンパスツアー」を実施します。この野外企画と並行して、レーモンドに関する屋内でのビデオ上映会も予定しています。新入生をはじめとした本学学生のみならず、本学教職員はもちろんのこと、建築と自然環境の問題や、建築と空間を巡る哲学・倫理学に関心のある学外の学生や研究者にも参加いただけたらと考えています。
レーモンド建築には、5つの原則があったことはよく語られますが、レーモンド自身が、建物が建つ予定の場所、地域、環境、自然といった、あらゆるその「場」に特化した特徴を把握した上で構造やデザインを決定し、細かな建築素材に至るまで現地産の素材の使用にこだわるなど、徹底した現場主義・現地主義が彼の建築思想の特徴のひとつでした。厳選された現地産の素材で作られる彼の建築構造物は、さらにその建物が建てられる自然の地形や環境としての特徴を十二分に活かし、それらを破壊するのではなく、むしろ新しく「装う」ことで、その地所にしか存在し得ない唯一無二の特別な「空間」と「時間」をそこに集う人々が皆等しく「共有」できる、そのような特別な「場」の創出として、レーモンドは自分が作る建物を構想していたと考えられます。
「時間」と「空間」の唯一無二の一回性思想とも言うべき建築理念がレーモンドの建築思想にあったことについては、2日間の本企画のうち、建築と自然環境や、建築と空間をテーマとしたワークショップなどで学術的に掘り下げる予定です。しかしながら、参加者の皆さまに、学問的、学術的な議論の対象としてレーモンド建築について知ってもらうというだけでは決定的に不十分であり、建築という非言語的構造物の魅力や特徴は、写真や映像などビジュアルな資料と共に参加者自らが直接・間接にレーモンド建築の実際を観て体験することで実感してもらう他ありません。そのために、実際に南山大学構内に多数存在しているレーモンド建築の実物を観て廻り、専門家のガイドによって直接目で確認し、体感して頂くために「南山大学レーモンド建築をめぐるキャンパスツアー」を企画しました。この企画によって、本学学内の学生や教職員の方々も、普段見慣れた、あるいは気づかないで通り過ぎていた建築構造物の数々がレーモンドという建築家の独自の思想によって造られた特別に価値のある建築であることに目を開かれる思いがすることでしょう。
特筆すべき点として、本企画は、山里キャンパス60周年記念事業の一環として実施されますが、本企画により、キャンパスの60年の歴史の中で、今回、3研究所が各研究所の設立以来、初めて合同企画の実施へと踏み出すことになります。ぜひ多くの方にご来場いただければと考えております。
南山大学3研究所合同企画ワーキング長
山田 望
研究所総合委員会委員長
石原 美奈子
南山大学3研究所合同企画ワーキングメンバー
宮脇 千絵・Enrico Fongaro・森山 花鈴