文字サイズ
  • SNS公式アカウント
  • YouTube
  • Facebook
  • X
  • Instagram

学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.38「多様性を活かす対話の文化とカトリック学校のアイデンティティ」

2023年5月17日

先月、日本カトリック学校教育委員会主催「第35回校長・理事長・総長管区長・司教の集い」に参加しました。コロナ禍を経て、二年連続の対面・オンライン併用のハイブリッド(ハイフレックス)の会議でしたが、日本各地のカトリック学校の教育に携わっている参加者はおよそ170名に上りました。今回のテーマは、昨年1月に教皇庁教育省が発表した指針、「カトリック学校のアイデンティティ 対話の文化を育むために」を受けて、「多様性を活かす対話の文化とカトリック学校のアイデンティティ」となりました。

教皇庁の指針「カトリック学校のアイデンティティ 対話の文化を育むために」の中心は、第一章に含まれている「対話のための教育」と題する部分です(27-30番)。そこに、カトリック学校のアイデンティティと対話との関係がうまく説明されていると思いますので、その重要な部分を皆さんと分かち合いたいと思います。

そこではまず、現代社会における対話の重要性が説かれています。「今日の社会は、多様な文化や宗教によって構成されているという特徴があります。このような状況において、『教育は未来に向けた中心的な課題を含んでいます。さまざまな文化的表現が共存できるようにし、平和な社会を育むために対話を促進するという課題です。』」

対話はカトリックのアイデンティティの不可欠な要素と特定されており、そのためには「カトリック学校は、(中略)この要素を自らのアイデンティティの構成要素として共有しています。ですから、『(中略)他者との深い関わり方として、“対話の文法“を実践しなければならない』のです。」

以前私は、エピストラ19号(2021年10月発行)で対話の真の意味について記しましたが、教皇庁の指針ではその意味を次のように述べています。「対話は、自己のアイデンティティへの関心と、他者への理解、多様性の尊重を結びつけるものです。このようにして、カトリック学校は『人が対話を通して他者と建設的なしかたでかかわり、寛容を実践し、自分とは異なる見方を理解し、真の和の精神の中で信頼を作り上げることによって、自己を表現し人間として成長する場となるのです。』」

最後に、「教皇フランシスコは対話を助けるための3つの基本的な指標、『自分自身と他者のアイデンティティを尊重する義務、違いを受け入れる勇気、そして意図の誠実さ』を示しました。『なぜなら真の対話は、曖昧さや、相手を喜ばせるための善の犠牲の上には成り立たないからです。違いを受け入れる勇気が必要なのは、文化的・宗教的に異なる人々を敵としてみたり扱ったりするのではなく、それぞれの善がすべての善の中にあるという真の確信を持って、同じ旅人として歓迎されるべきだからです。意図の誠実さが大切なのは、人間性の真の表現である対話は、特定の目標を達成するための戦略ではなく、むしろ、競争を協力に変えるために忍耐強く取り組まれるべき、真理への道だからです。』」

「人間性の真の表現である対話」を育む使命を果たすため努めたいと思います。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp