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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.19「対話の場としての学校」

2021年10月20日

前回のエピストラで、本学のアイデンティティについて考えました。そこで三つの様相、すなわち、多様性の重視、人間の尊厳、対話を挙げました。その三番目の対話についてはたぶんあまり知られていませんので、今回は対話についての考えを少し深めたいと思います。

前回でも述べましたように、対話は妥協することではなく、ギブアンドテークや譲り合うことでもなく、違う見方、違う考え方、違う信念を持っている人々がそれを正直に出し合って、一緒に真理を探求することです。私たちは、皆、自分の経験に基づいて、自分の立場から真理を理解しようとしますが、私たちの理解はまだ断片的かつ不完全のものです。それゆえ、同じく真理を追求している人々との対話を通して真理についての理解を補い合い、その探求を続けます。

対立が随所で顕在する現代社会において、しばしば意見は事実として捉えられ、科学的探究の妥当性が疑問視されることもあります。また、敬意をもって交わされるべき議論が成立せず、真実を共に探求することが困難になっています。だからこそ現在では対話が注目されています。大学の最も根本的な目的は、教育と研究を通して真理をともに追求するということだと考えますと、大学は、対話の場、対話を学ぶ学校になるべきではないでしょうか。

私たちは既にさまざまな活動を通して対話を実践しています。日頃の研究と教育でいうと、例えばゼミでの共同研究、授業でのディスカッション、ラーニング・コモンズでの共同学習はすべて対話の場となっています。

違う種類の対話も認めることができます。南山大学の南山宗教文化研究所は設立から、日本をはじめ広くアジアの宗教を研究するとともに、宗教間対話の実施が研究所の目的や使命として定められました。実際に、仏教の諸宗派、神社神道、新宗教の教団との対話を通して、お互いに信仰を深め、共に宗教的真理に近づこうとしてきました。そして、もう一つの対話の種類として、大学では多文化的対話が大いに実施されています。多文化交流ラウンジでの様々な計画を通して、楽しく気軽に他の文化を持っている人々との対話ができます。また、こうした経験をさらに深められるようにするために、現在建築中の南山大学ヤンセン国際寮で多文化交流を促進するプログラムが作成の段階に入っています。

他にも大学で実施している対話の例を挙げることができます。例えば、年度初めに「学長方針」が発表されていますが、それはまさに大学執行部内の対話のプロセスの結果、ということが言えます。また、毎年開催される大学祭は学生同士の対話と協力の成果です。

対話を学ぶ場、対話を実行する場としての大学の使命のさらなる展開のために、どういった新しい試みができるでしょうか。皆さんと共に考えたいと思います。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp