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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.18「大学の『ブランド』」

2021年9月15日

最近、オンラインで「カトリック教育学会」の大会に参加しました。今年の学会のテーマは「カトリック学校における宗教教育の現在――建学の精神の支柱をどう構築するか」でしたので、基調講演としてイエズス会の李聖一神父が「カトリック学校ブランドは今なお有効か」について話されました。李神父は長年、中等教育に携わり、現在は上智学院イエズス会中等教育担当理事をされています。講演の中で、彼はカトリック教会の近年の公文書に基づいてカトリック教育の使命について語り、イエズス会の教育活動の方針を紹介しました。話を聞きながら、私は神言会の教育の「ブランド」について考えました。「ブランド」という言葉に関して私自身は一定の違和感も持っているので、「ブランド」を「アイデンティティ」に置き換え、教育活動における神言会のアイデンティティがどのように表現されているか、を考えました。もちろん、同じカトリックの修道会ですので、イエズス会と大きな差異がありませんが、様々な修道会は各々の歴史や、創立者の精神に基づいてそれぞれの特徴を持っています。その意味で、神言会特有の教育の方針について考えたところ、私は以下、三つの点に注目できるのではないかと思いました。

まずは多様性を重視することです。国際性はたぶん神言会の最も重要な特徴で、修道会の方針であり、世界中のどこででも私たちは国際的なチームとして活動しています。多様な文化、考え方、ものの見方、やり方があるからこそイノベーションが期待でき、私たちの生活も豊かなものになっています。それゆえ、差異および個性は、寛容的にとらえられるべきものではなく、むしろ差異・個性こそ共同体の宝物だと考えています。

二番目は多様性と関連するものですが、一人ひとりの価値を認め合い、お互いに尊敬を払い合うことです。それは南山では「人間の尊厳のために」という教育モットーで表現されています。すべての人が平等に持っている、生まれながらにして持っている尊厳を認め、すべての人の尊厳が守られた社会をつくり上げる重要性を伝えることも神言会の教育活動の目的の一つです。

そして最後に「対話」が近年神言会の活動の特徴となっています。対話の意味に関しては、たびたび思い違いがあって、妥協すること、ギブアンドテーク、譲り合うことと考えられています。しかし、真の対話はそうではなく、違う見方、違う考え方、違う信念を持っている人々がそれを正直に出し合って、一緒に真理を探求することだ、と私たちは思っています。この世に、真理を完全に把握している人は一人もおらず、私たちは生涯を通じて真理に近づこうとしているに過ぎません。その意味で、対話は科学的方法に似ているものです。科学者は常に仮説を立て、それを検証し、自然界の真実に近づこうとしています。同じように、私たち皆は自分の経験に基づいて、自分の立場から真理を理解しようとしていますが、私たちの理解はまだ断片的で不完全なものですので、同じく真理を追究している人々との対話を通して真理についての理解を補い合い、探求を続けます。

多様性を重視し、すべての人の価値を認め、尊敬し合い、対話を通して多くの人と共に真理への探究を続ける大切さを伝えること、それこそが神言会の教育活動の目的であり、敢えて言えば、南山大学の「ブランド」ではないかと思っています。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp