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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.17「Tokyo 2020」

2021年8月25日

2013年に、東京オリンピックが決定された日、私はジンバブエのヴィクトリアの滝にいました。そこで偶然、新婚旅行中の若い日本人のカップルと会って、東京が2020年のオリンピックの開催地に選ばれたことを共に祝ったことを思い出しています。Tokyo 2020の現実に照らし合わせれば、その時の喜びはまるで皮肉のようです。

昨年3月、東京オリンピックの延期が決められた時、当時急展開していたパンデミックがどのような規模になるのかを私は初めて予感したように思います。長いパンデミックの中で、不安とさまざまな生活の制約を経験しながら、オリンピックの開催が自分の頭の中では一つの希望、トンネルの終わりの光となっていました。開幕が近づくとともに抗議の声が大きくなりましたが、私自身は無観客でも、規模を縮小してでも、長くて厳しい練習をした選手たちが自分の限界に挑戦している姿を見ることによって、このパンデミックを乗り越えるための勇気と希望を得ることができるのではないか、という期待を抱き続けました。

ウイルスの感染拡大状況を懸念しながら開会式を迎えた7月23日、私の気持ちは複雑でした。待ちに待ったTokyo 2020ではありましたが、こんな状況では「安心安全」な大会が本当にできるのだろうか、という不安は全国共通のものでしたでしょう。私は、普段、夜はわりと早く寝ますし、開会式は長時間にわたったので、見るのは少しにしようと思いましたが、勢いに乗って最後まで見ました。聖火の点火の場面で、大坂なおみ選手が現れた瞬間、私は感動しました。翌日の新聞では多様性を強調するため大坂選手が選ばれたと読みました。もちろんそれもいいことだと思いましたが、それよりも私が感動したのは、最近二つのトーナメントを欠場して、うつ病との闘いを明かした彼女がこの大事な舞台に出てくる勇気を持っていることでした。これこそは私が期待したパンデミック最中のオリンピックの効果ではないかと考えました。

感染症拡大第5波の最中のオリンピックでしたが、無事に終わったことにほっとしています。いろいろなハードルを乗り越えたり、多くの人を感動させたりしている選手たちに感謝しています。私にとって最も感動的だったのは、野球で金メダルを取った中日ドラゴンズの大野投手が表彰台で金メダルを掲げて天国にいるチームメイトの木下投手にメダルを見せた場面でした。勇気と希望を与えるオリンピックになったことに感謝しながら、パラリンピックも無事に開催できるように祈っています。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp