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南山大学の「ここ」を学問する
『南山大学をはかる』

大学の「見える」を測る

総合政策学部 総合政策学科

大八木 英夫 教授

OYAGI Hideo

南山大学は、いったいどれくらい離れたところから見えるのだろう?そんな疑問が頭をよぎった時、みなさんなら最初に何をするでしょうか?
大学にいるのなら、まずは先生に助けを求めて研究室のドアを叩いてみればいい。南山大学には何かを測って研究する専門家がたくさんいます。
今回は、国内外のあちこちに出かけて「水」を測っている自然地理学者、総合政策学部の大八木教授に南山大学を測っていただきます。

研究者インタビュー
地理学の専門家 大八木 英夫 氏

聞き手 奥田太郎(南山大学社会倫理研究所)

大八木教授は、どうして自然地理学者になったのか、まずは教えてください。

大八木氏

私が生まれ育った地域は神奈川県川崎市です。川崎は、いまでは歴史の教科書にも出てきますが、大気汚染の公害問題で苦しんだ地域です。すでに改善は進みつつあった時期でしたが、1980年代の小中学生のころには、友人の中にもぜんそくで悩む人がいました。高校時代は、化学の先生が担任で、化学部に入ってみないかと勧められたんです。そこで、川崎市内の大気汚染を調べたり、近くを流れる多摩川の水を採って化学分析したりしました。夏休みには琵琶湖や十和田湖まで行って、水質調査もしました。

化学を使うと、環境の状態が「見える」ようになる。その面白さから、気づけばずっと同じようなことを続けています。

大八木教授は、「場所の中で観察すること」を基本とする地理学の専門家ですが、やはり、道を歩いているといつもうっかり観察してしまったりするのでしょうか?

大八木氏

うっかり観察してしまう、というと、たとえば雨上がりで水が引いたあとの川底ですね。ああいうところには、いろいろ“痕跡”が出てきます。ボロボロの布団や靴みたいな古いゴミが出てきたりすると、「なんでこんなものがここに?」「その場で捨てられたのか、それとも上流から流れてきたのか」って、つい考えてしまいます。

一方で、水そのものは基本的に無色透明で、目で見てもよく分からない。だから、水質のデータを手がかりに水の動きを“追いかけて”います。どこから来て、どんな影響を受けて、どう変わっていったのか――そういうストーリーを組み立てていく感じですね。

恩師によく言われたんですが、「きれいなところ」は、じつは研究テーマになりにくいことがあるんです。汚れる原因や変化があるからこそ、解くべき問いが生まれて、そこに「はかる」意味が出てくる。そう考えると、川底のゴミも、立派に研究の入り口になりますね。

街中や山の中など、いろいろなところに出かけてらっしゃると思いますが、どんなときに何を測ってみたくなりますか?

大八木氏

測りたくなるのは、実はあまりないかも(笑)。というのも、水質分析って結構面倒くさいんです。水を採った瞬間から水温は変わりますし、成分が変化しないように容器を事前にしっかり洗って、条件をそろえて持ち帰って、ようやく分析する。しかも、知りたい項目によっては手順が大きく変わります。南山大学の学内では、水質分析をする機械もありませんし。

だから出先では、もう少し身近なところで「はかる」ことの入口を探すことが多いです。たとえばコンビニやスーパーに立ち寄ったとき、ミネラルウォーターの成分表示をつい見てしまう。硬度や塩分などの値を眺めて、「この地域の水はこういう特徴なんだな」とか考えたりします。海外に行っても、同じようなことをやってます。

講義でも、まずはそういう身近な観察から始めて、「はかるってこういうことだよね」という感覚を掴んでもらうようにしています。

「南山大学をはかる」と一口に言っても、さまざまなアプローチがあって、意外と奥深い。意味合いは異なるにせよ、どの学問も結局は何かを「はかる」営みなのではないかと考えています。そこで、不粋を承知で最後におたずねしたいと思います。大八木教授にとって「はかる」とは?

大八木氏

水に限らず「はかる」こと自体は、入口だけなら誰でもできると思います。技術や経験、そして予算が揃えば、伝統的な方法でも先進的な方法でも、測定そのものは可能です。

ただ、先輩研究者に言われた言葉が、いまも頭から離れません。「“ない”ことを確かめるためにも、その場所を測るのは大事だよね」と。

もし「ない」と予想されるものを測るとなると、それ自体は一見、無駄に見えるかもしれません。実際、論文でもそうした結果は本文に載りにくいことがあります。けれど、データや資料は、見方によっては無駄にもなる一方で、強力な裏付けにもなる。だから「はかる」というのは、現象を知るための道具であって、目的そのものではありません。

結局は、何を知りたいのか。そのために何を、どう測るのか。そこを考え続けながら、限りある時間の中で、得られたデータを無駄にしないよう、これからも測り続けていきたいものですね。そうして獲得したデータは、すべて宝物です。

南山大学の「見える」をはかる

Contents

目次

  • 1. 大学の「水」をはかる
  • 2. 大学が「みえる空間」をはかる
  • 3. 大学への「時間と距離と到達可能性」をはかる
  • 4. 大学の「見える」をはかり、防災と備えにつなげる

Profile

総合政策学部 総合政策学科

大八木 英夫 教授

専攻分野

環境科学・自然地理学・水文学

主要著書・論文

  • 「涌池における湖水の理化学的特性とその形成機構」(単著、日本水文科学会2005年)
  • Seasonal changes in water quality as affected by water level fluctuations in Lake Tonle Sap, Cambodia”(共著, Geographical Review of Japan Series B, 2017年)
  • 名古屋市名東区猪高緑地・すり鉢池における水域の歴史的変化と水収支について」(共著、なごやの生物多様性2023年)

将来的研究分野・経済発展と環境

  • “水”を基軸として地球環境変動や人間活動が自然環境に与える影響について

担当の授業科目

「環境科学」・「環境と文明」・「生活環境学」