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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.35「昔ばなし――私が神学生のころ」

2020年2月19日

南山大学では、将来、日本国内また世界各地で、司祭・修道者・宗教科教諭・宗教研究者等として奉職したいと希望する若者が、日本人学生、留学生を問わず、世界の各地から集い、ともに学んでいます。このような学生の中で、特にカトリック教会の司祭という職種を目指す若者を「神学生」と呼んでいます。

大学の沿革を確認すれば、1950年に文学部に哲学科が設置され、1962年に神学科が増設されました。その後、1979年に大学院文学研究科に神学専攻修士課程、1981年に神学専攻博士後期課程が増設されました。そして1984年に、神学科と神学専攻課程を基本に、教会法上の必要な科目等を追加することによって、「在名古屋南山大学教皇庁認可神学部」として、バチカンのローマ教皇庁に公認されることになりました。これは、当時、とても画期的な出来事でした。本学の学科と専攻そして宗教文化研究所に所属する教職員を中心に、独自に築き上げてきた教育・研究組織が、世界のカトリック教会で通用する教会法上の学位を授与できる、独立した司祭養成課程として公認されたということです。

今回は、学生の頃を振り返り、司祭叙階を目指した勉学の様子などを記してみたいと思います。私は、1973年から1982年まで、大学東門の外に建つ神言神学院に居住していました。この在籍期間からお分かりのとおり、これから紹介するのは、在名古屋南山大学教皇庁認可神学部の成立直前の物語です。

当時、日本の高校を普通に卒業した私のような若者の場合、文学部哲学科入学後の1・2年次を神言会の「志願者」として過ごします。その後、2年間の「修練期」が続きました。この期間には、まず大学を1年間休学して、岐阜県にある多治見修道院で「祈りと労働」のテーマを中心に修練し、続く2年目は、神言神学院にて「修道会の霊性」の勉強を中心に修練を継続するかたわら、哲学科3年次へ復学し、哲学の専門を勉強するという養成パターンでした。修練期を終えた1977年3月に、私は初めての修道誓願、いわゆる「初誓願」を立願しました。そして同年4月、哲学科4年生になり、神学の勉強にも手をつけながら、哲学の卒業論文(エドムント・フッサールの現象学の研究)を完成させて卒業しました。それから休むことなく、今度は同じ文学部内の神学科の3年次へ編入学して、聖書学と神学の諸領域を勉強し、同4年生で神学の卒業論文(マタイ福音書の研究)を完成させ卒業しました。学部は哲学と神学の2学科を卒業しましたが、当時の神学生にとってはそれが通常の養成コースでした。

その後、間を置かず、大学院文学研究科神学専攻(修士課程)へ進学して、司祭養成に必要な神学研究を深め、1981年3月に最後の修道誓願、いわゆる「終生請願」を立願し、翌年、修士論文(教父思想の研究)の最終試験に合格して修士課程を修了し、当時定められていた司祭養成課程をすべて修了して、1982年3月に「司祭叙階」に至りました。

以上のように、当時、神言神学院では、哲学5年間(内2年間の修練)と神学4年間(内学部2年と大学院2年)の司祭養成課程が組まれていました。一見、長いようにも思われますが、この間に、私たち神学生は、学部在籍中に南山中学・高校で教育実習を行って教職免許(社会科と宗教科)を取りました。これは、叙階後の神言会による派遣先として、中高の教員として活動する可能性を確保するためでした。大学院では神学修士号を取得しましたが、これは叙階後の派遣先が大学となる場合に備えるためでした。もちろん、以上の養成期間中、将来の小教区(教会)等での活動準備を兼ねて、土・日曜日の教会学校の手伝いや聖書の勉強会の手伝いを実践しました。
EPISTOLA読者の皆さんにはご存じの方もあると思いますが、神言会は、2020年現在、日本社会において、小教区での司牧宣教活動を行うとともに、南山学園のような、幼稚園から小学校、中学校、高校、大学、大学院までを擁する教育機関を運営していますので、教育宣教活動の対象とする年齢層の幅が広く、学校数も多いので、人手はいくらあっても充分とはいえません。私の場合、1982年3月に司祭叙階を迎え、初任地として名古屋市内の小教区へ2年間派遣されました。また、この間、神言神学院で志願者(大学1、2年生)グループの指導役も兼任していました。

現在、南山大学の人文学部キリスト教学科、大学院人間文化研究科キリスト教思想専攻および宗教思想専攻に、在名古屋南山大学教皇庁認可神学部が併設されています。以前に比べると、よりスムーズに教会法上の学位取得が可能となっており、充実した養成課程で学べるようになっています。
今年度末には、5名の神学生が「終生誓願」を立願する予定と聞いています。
彼らは4つの異なる出身国から南山に集っており、私の学生時代同様、現在もグローバル社会の縮図の様です。彼らの勉学が順調に進むことを祈りたいと思います。

卒業式後に、同級生や指導教員と(1980年)

南山大学長 鳥巣 義文

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp