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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.33「心に残った教皇フランシスコの言葉」

2019年12月18日

EPISTOLA読者の皆さんもご存じのように、11月末、ローマ教皇フランシスコが日本を訪問されました。ヨハネ・パウロ2世が1981年に来日されて以来、38年ぶりのことでした。教会関係者の間では、長崎、広島そして東京で教皇司式のミサが執り行われるとの案内がありましたが、私自身は仕事の合間を縫っての参列は無理と早々にあきらめていました。そのような折、首相官邸大ホールでの集いと上智大学での講話に出席する機会をいただきました。

滞在中の教皇の動向とスピーチについては、連日、マスメディアが報道し、国際情勢等の専門家のコメントも紹介されていました。今回、私は、自ら出席できた2つの集まりの中で、心に残った言葉を記してみたいと思います。

首相官邸大ホールの集いでは(※1)、教皇は今回の訪日のテーマが「すべてのいのちを守るため」であり、それは「すべてのいのちがもつ不可侵の尊厳と、あらゆる苦難の中にいる兄弟姉妹に連帯と支援を示すことの大切さを認識する」ことだと語っています。そして、あらゆる民族間、国家間の紛争は、出会いと対話によってのみ有効な解決を見出すことができるとして、日本で開かれるオリンピック・パラリンピック、異なる宗教間の良好な関係、美しい自然と地球の保全などの事例を挙げながら、指導者たちに国家間の協働責任の意識を高めるよう求め、「人間の尊厳は、社会的、経済的、政治的活動、それらすべての中心になければなりません」と明言しています。そのうえで、「各国、各民族の文明というものは、その経済力によってではなく、困窮する人にどれだけ心を砕いているか、そして、いのちをはぐくみ豊かにする能力があるかによって測られるもの」だと説いています。

上智大学での講話では(※2)、大ホールに、上智の学生、教員、職員の皆さん、そして私のようなカトリック大学関係者が集いました。教皇フランシスコは、自らの出身修道会イエズス会が設置母体である上智大学の学生たちに、心からの愛をこめて語っておられたと感じました。上智大学の学生たちに向かって、こう語られました。「何が最善なのかということを意識的に理解したうえで、責任をもって自由に選択するすべを習得せずに卒業する人がいてはなりません」。また、「若者たち自身もその教育の一翼を担い、自分たちのアイデアを提供し、未来のための展望や希望を分かち合うことに注力すべきです」。そして、あるべき大学の姿についても、「社会的にも文化的にも異なると考えられているものをつなぎ合わせる場となることにつねに開かれているべきです」などと語られ、大学の使命の実現へと聴衆を鼓舞しておられました。

私は、2つのスピーチは、私たちが日常的に出会う人間一人ひとりへの関心を、その基礎に据えていると感じます。そして、前者の話は、南山のHominis Dignitati(人間の尊厳のために)に通じ、また、学生教育の文脈で語る後者の話は、南山の「個の力を、世界の力に。」、「国境のない学びの場」また南山チャレンジプロジェクトなどに通じると思います。

※1 カトリック中央協議会のHP(「教皇の日本司牧訪問 教皇のスピーチ 政府および外交団との懇談 2019年11月25日、首相官邸大ホール」2019年12月2日付)を参照。

※2 カトリック中央協議会のHP(「教皇の日本司牧訪問 教皇の講話 上智大学訪問 2019年11月26日、東京」2019年12月2日付)を参照。

南山大学長 鳥巣 義文

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp