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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.11「雪の下の花の種」

2018年2月21日

1月中旬以降、本学のキャンパスは入学試験の季節到来という雰囲気で満たされます。もちろん大学入試にはさまざまな選抜方式があり、それぞれ定められた時期に実施され、そのための説明会等も年間を通して開催されているので、何もこの季節に限ったことではないのですが。

しかしながら、2月は一般入試と全学統一入試が実施されます。この2つは、本学が実施する選抜方式の中では、志願者数が1番目と2番目に多い入試です。キャンパスが主要な試験会場になるので、早朝から受験生を迎える準備を整えながら、冒頭で述べた季節到来の雰囲気がピークに達するわけです。

2月に入ると「立春」という声も聞きます。しかし2月は日本の多くの地域ではまだまだ寒い時期であり、北海道は言うに及ばず、北陸や東北の各地では大変な積雪があります。太平洋側に位置する名古屋でも、過去には雪が積もるほど降った年があります。本学はなだらかとは言え台地の上に建っているので、積雪が予想される場合、すでに前の晩から、校門へ通じる坂道の凍結防止作業で大忙しということになります。

「きさらぎ」という2月の異称の由来には、周知のように、いくつかの説明があります。「衣を更に重ねて着る」という解釈では、2月の寒さが印象づけられますが、「草木が芽を張り出す」あるいは「気更に来る」という言い回しに基づくと考えれば、芽生えの時期の到来あるいは陽気に向かう始まりの印象を受けます。2月の位置づけは、なかなか微妙なのですね。

私が本学に着任する前に公開されたアニメーション映画『おもひでぽろぽろ』(※1)の主題歌に、――思いだしてごらん 冬 雪に埋もれていても 種子(たね)は春 おひさまの愛で 花ひらく――(※2)という一節がありました。オリジナル曲は、Bette Midlerが歌った『The Rose』だそうです。まだ寒い、場所によっては積雪のある2月に受験する方々には、心に残る歌詞と言えるかもしれません。

私はバラの花を種子から育てたことはありませんが、詳しい方によれば、バラの種子は低温を経験しないと発芽しないのだそうです。それで、寒いところで保管したり、冷蔵庫で保管したりするのだそうです。

今、寒さの中で風邪など引かぬよう気遣いながら頑張っている受験生の皆さんが、おひさまの愛で花ひらくことができますように。

※1 岡本螢・刀根夕子 原作、高畑勲 脚本・監督『おもひでぽろぽろ』、スタジオジブリ、1991年

※2 Amanda McBroom 作詞・作曲、高畑勲 日本語訳詞、星勝 編曲、都はるみ 歌「愛は花、君はその種子(THE ROSEより)」『スタジオジブリの歌-増補盤-』、徳間ジャパンコミュニケーションズ、2015年(CD)

南山大学長 鳥巣 義文

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp