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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.76「偉大なる人間性」

2026年7月15日

2026年5月15日、教皇レオ14世は初の回勅(かいちょく)を発布しました。回勅とは、特定の必要性に対処したり、カトリック教会の教えの特定の点について説明したりすることを目的とした公式の書簡です。この発布日は、カトリック教会の社会教説を扱った最初の回勅とされる、教皇レオ13世の『レルム・ノヴァルム(Rerum Novarum)』発布から135周年にあたる日を選んだものでした。教会の社会教説とは、キリスト教信仰の観点から現代の社会問題について考察し、それらの問題に対処するための倫理的な指針を示すものです。例えば、レオ13世の回勅は産業革命に起因する問題を取り上げ、特に労働者や子供の権利に注意を喚起するものでした。そして、今回の回勅が取り上げているのは、AI(人工知能)の開発と、その利用の急速な拡大という問題です。

この回勅は、カトリックの社会教説の発展に関する簡潔な歴史と、その教説の基礎および原則の要約から始まり、この主題への優れた入門的概説となっています。AIの発展については、特に第3章「技術と支配――AIの可能性に照らした人間の偉大さ」において取り上げられており、そこではAIが「警戒を要する有益なツール」として描かれています。AIをめぐる主な懸念の一つは、ごく少数の主体によって開発が進められているにもかかわらず、監視や透明性がほとんど確保されていないという点にあり、そこから責任の所在を問う問題が生じています。

システムの設計・開発者から、それを利用し、具体的な意思決定の拠り所とする人々に至るまで、あらゆる段階において責任の所在を明確にする必要があります。しかし多くの場合、結果に至る内部プロセスは不透明なままであり、そのため責任の所在を特定したり、誤りを是正したりすることが困難になっています。そこで重要となるのが「アカウンタビリティ(説明責任)」です。つまり、誰が意思決定について「説明」し、その正当性を立証し、監視を行い、必要に応じて異議を唱え、生じた損害を補填する責任を負うのかを特定できるかが問われるのです。(第105節)

同章では、「特定の利益やコミュニケーション戦略に資するために真実がしばしば歪められる」AI時代における教育の役割についても具体的に言及されており(第139節)、また、AI利用がもたらす影響の理解を助け、不可欠な安全策を提示する上で、研究に携わる人々が担う特別な責任についても触れられています(第209節)。

最終章は「力の文化と愛の文明」と題され、AI時代の戦争と平和の問題を扱っています。そこでは、次のような言葉で個々人の役割が強調されています。「愛の文明は、単一の、あるいは華々しい身振りから生まれるものではなく、非人間化に対する防波堤となるような、小さくも揺るぎない誠実な行いの積み重ねから生まれるものである」(第213節)。

この回勅自体はかなり長いものですが、その内容を余すところなく読み、深く考察する価値は十分にあります。AI時代における大学の役割について私たちが考察を深めていく中で、本回勅は間違いなく、活用すべき重要な資料の一つとなることでしょう。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp