文字サイズ
  • SNS公式アカウント
  • YouTube
  • Facebook
  • X
  • Instagram

学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.67「AIと教育」

2025年10月15日

AIは急速に私たちの日常生活の標準的な機能になりつつあり、多くの場合、私たち自身が積極的に利用するか否かに関わらず、普及しています。教育におけるAIについても同様です。2年前に行われた調査では、日本の大学生の約半数がAIを利用したことがあり、30%が日常的に利用していると回答しました。最も一般的な利用目的は、レポートなどの論文作成の参考資料、翻訳、チャットパートナーです。多くの大学が学生のAI利用に関するガイドラインを作成しており、AIを積極的に活用している大学(筑波大学)からAIの利用を一切禁止している大学(上智大学)まで様々です。南山大学は、教育学習の充実を目的としてAIの実験的利用を許可していますが、AIで作成したレポートを提出することは剽窃・盗用に当たる可能性があるとしています。また、昨年度から開始した全学部生を対象とした「南山大学 数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」では、データとAIの活用分野、活用方法、利用上の留意点なども学びます(https://office.nanzan-u.ac.jp/KYOUMU/course-class/class12.html)。

ロバート・プレボスト枢機卿は、今年5月に教皇に選出された際、AIの台頭と関連付けて、教皇の名に「レオ」を選んだ理由を説明しました。教皇レオ13世が19世紀末の産業革命に起因する様々な社会問題について論じたように、レオ14世はAIが新たな産業革命をもたらす中で、人間の尊厳、正義、そして労働を守ることが喫緊の課題となっていると述べました。

新教皇選出に先立つ2025年初頭、教皇庁はAI活用における倫理的課題を整理した包括的な文書「人工知能と人間知能の関係に関する覚書」を発表しました。(日本語訳は日本カトリック中央協議会のウェブサイトに掲載されています。https://www.cbcj.catholic.jp/2025/05/26/32551/)この文書は、人工知能と人間の知能を区別し、AIは何よりも人間の尊厳を傷つけるのではなく、高めるものでなければならないという前提に基づき、AIの倫理的な開発と利用に関するガイドラインを提示しようとしています。さらに、経済、労働、医療、人間関係、教育など、様々な分野におけるAIの開発と利用の利点と危険性を指摘しています。主な懸念事項として、誤情報の問題、いわゆるディープフェイクの利用、プライバシー、そしてAIの戦争利用などを挙げています。

私たちは、今日の人類家族にとって圧倒的な懸念事項としてこれらの倫理的問題に精通し、AIをどのように使用して人間の尊厳を促進できるかを真剣に考え、AIがその尊厳に脅威を及ぼす可能性を認識しなければなりません。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp