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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.66「マグサイサイ賞2025」

2025年9月17日

8月末、2025年度マグサイサイ賞の受賞者が発表されました。マグサイサイ賞は、フィリピンの第7代大統領ラモン・マグサイサイにちなんで名付けられ、1957 年に設立されました。この賞は、アジアにおいて特定の分野で優れた業績を上げ、その活動を通じて他者に多大な貢献をした個人または団体に贈られます。「アジアのノーベル賞」とも呼ばれています。昨年は、日本のアニメーターである宮崎駿氏が受賞者の一人でした。

今年は1団体と2名の受賞が発表されました。インドの非営利団体「世界女子教育財団(Foundation to Educate Girls Globally)」がインド初の受賞団体となりました。また、海洋プラスチック問題に取り組む環境活動家であるシャヒナ・アリ氏は、島国モルディブ初の受賞者となりました。3人目の受賞者は、フィリピン出身のカトリック司祭で神言会員であるフラビアーノ・アントニオ・L・ビラヌエバ神父です。ビラヌエバ神父は、フィリピンのドゥテルテ前大統領政権下で麻薬密売容疑者が超法規的に殺害された事件の被害者への支援活動に対して受賞しました。

マグサイサイ賞を受賞した神言会会員 ビラヌエバ神父
(写真 引用先:https://svdcuria.org/

ビラヌエバ神父自身も元薬物使用者です。薬物依存から回復した後、「最も道を踏み外し、最も貧しい人々でさえも、救済と再生を見出すことができることを証明するため」、司祭になることを決意しました。2006年に叙階され、2015年にはマニラにアーノルド・ヤンセン・カリンガ・センターを設立しました。「カリンガ」とは、タガログ語で「食べる」「学ぶ」「入浴する」「健康になる」の頭文字をとったもので、センターで提供されるプログラムを示しています。センターは、マニラのホームレスや薬物使用者を含む貧困層に食料、衣服、住居を提供しています。数千人の死につながった麻薬密売容疑者の超法規的殺害が始まった際、ビラヌエバ神父は犠牲者の遺体捜索と尊厳ある埋葬のための活動を主導しました。また、犠牲者の未亡人や孤児の苦しみを和らげるため、犠牲者の慰霊碑も建立しました。その活動に対して彼は殺害の脅迫を受け、扇動罪でも起訴されましたが、この容疑は最終的に2023年に取り下げられました。ドゥテルテ前大統領自身も、法外な殺害に基づく人道に対する罪に関与したとして、国際刑事裁判所の令状により、2025年3月に逮捕されました。

ビラヌエバ神父は、まさか殺害予告や扇動罪の容疑に直面すること、そしてマグサイサイ賞を受賞することなど、想像もしていなかったでしょう。彼は、自らの救済体験を活かし、同じような境遇にある人々を助けたいと願っていました。同じ神言会員として、私は彼の功績を誇りに思います。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp