学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」
No.62「フランシスコ前教皇との思い出」
2025年5月21日
2013年にフランシスコ前教皇がローマ教皇に選出されてから約1年後、私は神言会ローマ本部の仕事でインドを訪問していました。訪問中のある午後、インド中部で神学生のグループと会い、話す機会がありました。話の中で、一人の神学生が私に、なぜフランシスコ教皇は世界中の人々にこれほど人気があるのか、と尋ねました。私は少し考えた後、「彼の質素さだと思います」と答えました。さらに、「彼の質素さ」とは、伝統的な教皇の住居を断り、バチカンのゲストハウスで他の住民や訪問者と一緒に暮らすなど、彼の質素な個人的な生活様式と、キリスト教の最も中心的な教えを誰にでも理解できる平易な言葉で説明すること、という両方を意味していると説明しました。教皇に選出された後の最初の日曜日に、彼がバチカン近くの教会を訪れ、説教の中で、私たちは神に許しを乞うことに飽きてしまうかもしれないが、神は私たちを許すことに飽きることはない、という趣旨のことを話されたことを覚えています。このように、彼は簡単な言葉と例を通してキリスト教の信仰を伝えようとしました。

この質素さは、私が彼に個人的に会う機会が3回あった中にも表れていました。
最初は教皇選出から数ヶ月後、彼が住んでいたバチカンのゲストハウスの礼拝堂で毎日ミサが行われていた時のことでした。彼は毎朝のミサに、参加を希望する人を誰でも招待する習慣を始めていました。小さな礼拝堂であったため事前に予約が必要でしたが、当時はミサへの参加許可を得るのは比較的容易でした。ミサの後、彼は礼拝堂の前に立ち、参加者一人ひとりに個人的に挨拶し、握手と言葉を交わしていました。彼が若い司祭であった時代に日本で活動することを考えていたと聞いていたので、私は日本での私の活動について簡単に話しました。
2回目は2018年の夏でした。神言会は6年ごとに、会の指導体制と優先事項を決定するために国際会議を開催します。会議に参加した会員全員が、バチカンで教皇に謁見するよう招待されました。長い一日の終わり、おそらく他にもたくさんの会合があったのでしょうが、神言会の印象について簡潔に話してくださり、その後、私たち一人ひとりと個別に会って握手と言葉を交わしてくださいました。
最後に会ったのは2024年1月、国際カトリック大学連盟(IFCU)の創立100周年記念式典の時でした。私たちは再びバチカンに招かれ、教皇に謁見しました。当時、教皇は様々な健康問題で入退院を繰り返しており、前回お会いしてから6年の間にかなり衰弱していたことは明らかでした。それでも、教皇は私たち一人ひとりと個別に会ってくださり、カトリック高等教育の活動において私たちを励ましてくださいました。
彼のような質素な人間が、その質素さゆえに世界をより良い方向に変えてきたと信じています。彼の模範が、私たちにも同じことをする勇気を与え続けますように。
南山大学長 ロバート・キサラ
発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp)