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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.60「It remains for us now to build the earth.」

2025年3月19日

今年の初めに、ある新聞社の新年講演会に参加させていただきました。世界政治に詳しいアナリストが「トランプ第二次政権と世界」についてお話をされま したが、その中で最も印象に残った発言は、「トランプ第二次政権のもとで、80年間続いた戦後の世界秩序は途絶えるでしょう。」です。その後の様々な動きを見れば、その予言はすでに実現しつつあると認めなければなりません。80年間、時折紛争や大きな混乱こそあったものの、おおむね平和と安定を保証し、世界中で多くの人々の繁栄をもたらしてきた世界秩序は終焉を迎え、何がそれに代わるのかはまだ明らかではありません。

本学のライネルス中央図書館前の広場、アルムナイガーデンの真ん中に、地球を表している作品が設置されています。その近くにあるプレートに次の言葉が見られます。“The age of nations is past. It remains for us now, if we do not wish to perish, to set aside the ancient prejudices and build the earth.”それは、「国家の時代は過ぎ去りました。私たちが滅びたくないのであれば、昔からの偏見を置き去り、地球を築くことが、私たちに任せられています」という意味です。これはフランス人の科学者でありながら哲学者・思想家でもあったピエール・テイヤール・ド・シャルダンが残した言葉です。あらゆる国境をなくして、地球は一つであり、そして文化、宗教、ジェンダーの差異に基づいた偏見を捨て、この一つの地球を一緒に築くことが私たちに任せられている、とシャルダンは説きました。私たちが今生きている現状を考えますと、シャルダンの言葉はますます重要な意味を持っていると思います。

5年前に始まったコロナ禍の中で世界の不正や様々な格差が注目され、コロナ禍後は以前の状態に戻るのではなく、すべての人間の尊厳が守られるより良い世界を築く必要がある、と教皇フランシスコはたびたび主張しました。この新しい地球を築くことが私たちに任せられていますが、特に今月大学を卒業し、新社会人になる皆さんには、この重要な挑戦が待っていると思います。
大学で皆さんが挙げた成果を祝し、これからの活躍を大いに期待しています。卒業おめでとうございます!

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp