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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.59「アウシュビッツ」

2025年2月19日

今年は終戦から80年になりますが、終戦に至るまでの重要な出来事を記念する機会がいくつかあると予想されます。その1つとして、1月27日に、世界中の人々がアウシュビッツ強制収容所解放から80年を厳粛に記念しました。ポーランド南部にナチス・ドイツによって建設されたこの強制収容所で、110万人が虐殺されました。

2006年に私が初めてポーランドを訪れた際、首都ワルシャワ、チェンストホバにある有名なヤスナ・グラ修道院と共に、アウシュビッツにも行きました。あまりにも強烈な思い出で、その日に感じたことを今でもはっきりと覚えています。悪魔、悪そのものが自分の目の前に現れている、と肌で感じました。できるだけ多くの人を効率的に虐殺するという唯一の目的のために建設された強制収容所は、人間の心に潜む最も残酷な悪の物理的顕現でした。

今回の追悼式典に、およそ50ヵ国の代表者と共に強制収容所虐殺生存者約50人が参加しました。当日のNHKニュースはその一人に焦点を当てて、彼が特に現在各地に勢力拡大している排他的主張を掲げる政治現象を懸念していることを指摘しました。「対話や寛容さが失われた時、何が起こるかよく考えてほしい」と彼は訴えました。

昨年1月の「エピストラ」で、国際大学協会(International Association of Universities)の事務局長の言葉を引用して、「世界中の流動的かつ紛争的な現状において、大学が自らをどのように位置付けるべきか、またどのような役割を果たすべきか」について考えました。それから一年経ち、現状はさらに深刻になってきたので、彼の答えをもう一度紹介します。

「私たちが直面する複合的かつ多面的な危機は、個人であれ集団であれ、より一層の理解を必要とし、感情が高ぶったときでもコミュニケーションをとる方法を見つけなければなりません。大学は道徳的リーダーシップを発揮し、文化間の架け橋となる方法を示す最前線に立たなければなりません。大学は対話が必要とされる灯台であり、分析と知識が指針を示してくれます。また、代替的なアイデアを育み、旧来の行き詰まりに対する新しいアプローチを生み出す場所です。」

カトリック大学であり「人間の尊厳のために」を教育モットーとして掲げている本学は、この使命を果たすためにさらなる努力をすることが求められています。今年、終戦80周年を記念しながら、私たちの使命を肝に銘じて、「人々の心に平和を築く」ことに努めましょう。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp