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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.44「人間の尊厳が問われている現在にこそ」

2023年11月15日

本学の必修科目の一つ「宗教論」を履修している1年生を対象として、クォーター毎に「学長講演会」を開催しています。講演会では、本学の歴史と使命、そのアイデンティティである多様性への尊重と「人間の尊厳のために」という教育モットーについて話します。10月25日、第3クォーターの講演会を実施し、長引いているロシアによるウクライナへの侵攻に加え、イスラエル・パレスチナ戦争の勃発で、大勢の無実の民間人の命が奪われている現状に接し、現在こそ本学の建学理念である「人間の尊厳を尊重かつ推進する人材の育成」の重要性を痛感します。

講演会の最後には、4年前の学長就任時に掲げた「地球規模の関心、私たちの貢献」に触れ、在学4年の間に、すべての人が平等に持っている尊厳が守られた世界を構築するために、自分固有の貢献を考え、それを見つけてほしい、という私の希望を伝えます。私自身は研究者・教育者として、自分固有の貢献を図っていますが、「これで十分なのか」と常に自問しています。問題のスケールの大きさに対して、私たち一人ひとりのできることは非常に限られていると感じています。とはいえ、一人ひとりの貢献がなければ何も始まらないと考えれば、私のできる小さなことも大事ではないか、とも思っています。

先日Facebookで、ある祈りを見ました。キリスト教活動家シェーン・クレイボーンらによって書かれた英語の祈りですが、日本語にすれば、次のようになると思います。「平和構築とは受動的なことを意味するものではありません。それは、不正義を映し出すことなく不正義を遮る行為であり、悪を行う者を滅ぼすことなく悪を武装解除する行為であり、戦うでも逃げるでもなく、和解と正義について慎重かつ困難な追求をし、第三の道を見つける行為なのです。」

10月28日、本学同窓会の中四国支部総会が広島市で開かれ、私はそれに参加しました。総会後、参加者一同は原爆死没者慰霊碑に行き、同窓会会長と私で献花を行いました。平和記念公園では、折り鶴を捧げている子どもたちがいたり、慰霊碑の前で黙祷している外国人観光客がいたり、原爆の悲惨さを語る若者がいたり、皆で平和構築のための第三の道を見つけようとしていると感じました。私も、その道の探究を続けたいと思います。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp