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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.22「新しい日の叙情詩」

2022年1月19日

昨年1月のバイデン大統領の就任式の際、アメリカの若年詩人アマンダ・ゴーマンが自作を発表しました。その当時、ゴーマン氏は22歳で、史上最年少の大統領就任式詩人となりました。発表した詩は「The Hill We Climb(われらが登る丘)」と題されるもので、1月6日に起こったアメリカ連邦議会襲撃事件直後に書かれたものでした。深く分断した状態にあるアメリカ社会の実情を直視しながら未来への希望を歌い、広く注目されるようになりました。

ゴーマン氏は黒人の女性で、その立場から詩作を続けています。子どもの頃から発話障害に悩まされましたが、やがてハーバード大学に入学し、21歳で社会学の学位を取得しました。最初の詩集は2015年に発表され、大学在学中に全米青年桂冠詩人の第一回受賞者に選ばれました。大統領就任式直後、彼女はアメリカンフットボール決定戦「スーパーボウル」の史上初の詩人となり、コロナ禍のなかで多くの人々の生活を支える医療従事者などの貢献を歌い「Chorus of the Captains(キャプテンたちのコーラス)」と題した自作を朗読しました。

今年の初めに、私はたまたまフェイスブックでゴーマン氏の新作を見て、感動しました。新年に向けて昨年12月30日に発表した「New Day’s Lyric(新しい日の叙情詩)」という作品です。2年間のコロナ禍における経験を巧く表現したこの詩は、コロナ後のより良い新しい世界を想像し、それを創るように勇気と希望を与えるものだと思いました。詩の一部と私の試訳を紹介します。

We are learning
That though we weren't ready for this,
We have been readied by it.

私たちは学んでいる
準備はできなかったけれど、
私たちはそれによって準備させられている。

This hope is our door, our portal.
Even if we never get back to normal,
Someday we can venture beyond it,
To leave the known and take the first steps.
So let us not return to what was normal,
But reach toward what is next.

この希望は私たちの扉、私たちの入口である。
たとえ正常に戻らなくても、
いつか私たちはそれを超えて冒険できる、
慣れたことから飛び立ち、最初の一歩を踏み出すために。
だから、普通だった状態に戻るのではなく、
かわりに、次のことに手を伸ばそう。

私たちは現在第6波の最中にいて、油断はできません。しかし、コロナ後のより良い新しい世界を想像し、共にその新しい世界へ旅立ちましょう。新年おめでとうございます。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp