文字サイズ
  • SNS公式アカウント
  • YouTube
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram

学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.13「永遠回帰の神話」

2021年4月21日

私が専門としている宗教学の歴史において、「永遠回帰の神話」が一つの重要な概念となっています。これは、ルーマニアで生まれ、シカゴ大学で活躍したミルチャ・エリアーデ(1907~1986年)が提案したもので、彼によれば、それはほとんどすべての古代宗教に見られる、人類が共通している考え方です。この永遠回帰の神話では、たとえば、毎年の年間行事を通して、私たちは歴史の最初にあった聖なる時間、完全な世界を再現しようとするということが表されています。つまり、人類はいのちそのものの根源を思い出し、民族固有の「物語」を確認し、将来へのコミットメントを新たにする、ということです。

今月の初めに、私たちは2021年度の入学者を迎え、縮小されたとはいえ、入学式を挙行することができました。また、新2年生のために、一年遅れの「入学セレモニー」も行いました。昨年度と今年度の新入生はこの大学での年間行事を通して、自分が今まで歩んできた道を振り返り、自分の人生の目的を確認し、これからの自分を築く決意ができたでしょう。しかし、入学式は新入生のためのみではなく、大学全体にとって「永遠回帰」のような行為だと思います。毎年の入学式を通して、大学に関わっている教育職員、事務職員、在学生、同窓生など、全員にとって、大学の使命を再確認し、その使命の達成に向けての努力を新たにする機会にもなっています。

入学式の場で読み上げた学長告辞の言葉を借りて、ここで大学の使命を振り返ってみたいと思います。南山大学はキリスト教世界観に基づいた教育を行うために創立され、「人間の尊厳のために」という教育のモットーを掲げています。簡単に言うなら、「人間の尊厳」はすべての人がかけがえのない価値を有し、人間らしく生きる権利を持っていることを意味するものです。そしてその尊厳にふさわしい行動をとり、すべての人の尊厳が守られた環境を作る義務を認識することも本学の理念の意味に含まれています。人間の尊厳を尊重し、すべての人の尊厳が守られた環境を作り上げるために努力するという行為は、まさに性別、人種、文化、宗教などの違いを問わず、すべてのいのちを守る意味合いを持っています。こうして、すべてのいのちを守る決意に国境などの隔たりは関係ありません。全人類の運命が深くつながっているこの時代に、本来ある本学の教育理念を表すために、私は「地球規模の関心、私たちの貢献」を南山大学の教育および研究活動の特徴として掲げています。

特に今年度、大学創立75周年を祝うことによって、大学の使命の達成に私たちのコミットメントを新たにしましょう。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp