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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.12「3.11」

2021年3月17日

東日本大震災から10年が経ちました。命を落とされた方々のご冥福をお祈りするとともに、様々な被害を受けた多くの方々のためにお祈りを捧げます。

おそらく、その当時生きていたすべての人は、地震が起こった時に自分はどこにいたのか、何をしていたのか、はっきりと覚えているでしょう。私は、ローマにある神言会の総本部の仕事でベトナムにいました。その日の夕方、同僚から日本で大きな地震があったことを聞き、ホテルに戻ってCNNでニュースを見ましたが、この時点では被害の本当の規模はまだ把握されていませんでした。翌朝、テレビをつけると津波による被害、そしてなかでも福島第一原発の事故が広く報道され、想像を超える非常に大規模な被害に見舞われていることがわかりました。

ベトナムでの仕事を終えてローマに帰る前に、何日間か日本に立ち寄る予定でしたので、地震発生から3日後、3月14日の早朝に成田空港に着きました。そこにカオスが待っていました。東京ではすでに計画停電が実施されていましたので、空港発の電車が動きませんでした。幸いに、東京都内への最後のバスに乗ることができましたが、東京も混乱に陥っていました。東京で計画していたことは何もできず、2日間は宿泊先の部屋でテレビのニュースをひたすら見ました。ローマに帰る日になって、仕方なくタクシーで成田空港に行きましたが、空港はまだ混乱の状態でした。原発事故の最悪の結果を恐れてヨーロッパからの飛行機の便は次々と欠航になったのですが、私が乗る予定の便も同様でした。結局、私たちはみな航空会社が手配したバスに乗せられ、関西空港まで行き、夜中にやっとローマ行きの便に乗ることができました。

私だけではなく、多くの人が持っている日本のイメージは、ほとんどのことが計画通りに進んでいる秩序ある社会ですが、3.11直後の状況はそのイメージから遠く離れていました。福島第一原発事故の展開が読めないなか、そういった日本はもうなくなるかもしれない、と心配していた人も多くいたことでしょう。その年の終わり、2011年の大晦日に、NHK紅白歌合戦をローマで見ましたが、大震災からの回復のために「絆」が強調されていたと記憶しています。それから10年間、その絆のお陰で日本社会は着実に回復の道を歩んでいます。

この一年、日本だけではなく、全世界はまた別の災厄に苦しめられていました。そのなかで、多くの人々の命を守るために、私たちは絆の大切さを再確認することができたと思います。幸いにして、ワクチンができ、ようやくコロナ禍の終息に希望の光が見えてきました。しかし、ワクチンによってすべての人のいのちが平等に守られるまで、絆の大切さを忘れてはいけません。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp