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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.10「夜明け前」

2021年1月20日

「夜明け前が一番暗い」という言い回しがありますが、この言葉は現在の状況をよく表していると思います。コロナウイルスに対する複数のワクチンができて、ウイルスの終息への希望が湧いてきたとはいえ、今が感染症拡大のもっとも厳しい状況になっています。今こそ気を引き締めて感染防止対策に取り組むことが要求されています。

年末、私は「現代における宗教の役割研究会」主催のシンポジウムにオンラインで参加しました。これは毎年行われるシンポジウムですが、今回のテーマは「新感染症の時代と宗教」で、コロナ禍の経験から私たちは何を学んだか、宗教者はどのように対応したかということを議論しました。そこで、ある講演者がウイルスの「普遍性」について話しました。彼によれば、ウイルスは国境、宗教、人種、性差を超えるということで、「自分だけ」という考え方はもはや通用しない、私たちはすべての命とつながっているということを再確認させたということです。私は、自分の部屋で一人でありながらもこのようにZoomを通してシンポジウムに参加している他の人々とつながっているだけではなく、結局世界中のすべての人々とつながっているということを改めて考えさせられました。また、この講演者は、不要不急の外出を控えるように訴える政府の要求は、いったい何が重要なのか、何が必要なのかを私たちに問いかけるものだと続けました。彼の答えは、娯楽はもちろん、仕事よりも、学校よりも、何よりも「いのち」が重要である、ということでした。今年度の「学長方針」に掲げている「地球規模の関心、私たちの貢献」とも通じる点が多いと思いました。感染症拡大の中で、私たちにはお互いを守る、すべての命を守るための相互責任を再確認する機会になったと思います。

私は大晦日にいつも通りに「紅白歌合戦」を見ましたが、途中で宇宙ステーションから野口聡一さんのメッセージが報道されました。野口さんは「宇宙から見る地球は美しい」という簡単な感想を伝えたうえで、「この美しい地球を守ろう」と続けました。それを聞いて、私はおそらく惑星としての地球だけではなく、地球が維持しているすべての「いのち」もまた美しいのだろうと考えました。この美しい地球、美しい「いのち」を守ろう、これが私にとっての新年の合言葉となりました。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp