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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.9「クリスマス」

2020年12月16日

今年も、キャンパスのメインストリートにイエスの誕生を描写する馬小屋が飾られています。これは聖書のルカによる福音書に記述されているイエスの誕生の物語に基づいています。全住民の登録が命じられ、そのためにヨセフと身ごもっていたマリアはナザレからベツレヘムへ旅立っていました。しかしベツレヘムに泊まる宿を見つけることができず、やむなく馬小屋で凌いでいました。その場でマリアはイエスを産み、飼い葉桶(かいばおけ)に寝かせていたところ、周りで野宿していた羊飼いたちがイエスの誕生を祝いに来ました。

イエスの誕生の物語を描写する馬小屋を飾る習慣は、13世紀のイタリアで広まったと言われています。アッシジの聖フランシスコが中東を訪れた際に、初めてその習慣を知り、母国のイタリアにそれを紹介した、というのが由来だそうですが、今日もイタリアのクリスマスには欠かせない習慣です。各教会には手の込んだ馬小屋が飾られます。クリスマス当日はクリスマスのごちそうを済ませてから、近くの教会を巡り、飾られている馬小屋を鑑賞する家族が多いです。

ヴァチカンのサンピエトロ広場にも毎年手の込んだ馬小屋が飾られています。大学の馬小屋と違って毎年同じものが飾られているのではなく、オリジナル作品が考案され、展示されます。イタリアの多くの教会も同様です。私が住んでいたローマにある神言会の総本部にもその習慣があって、基本的にその年にあったテーマでイエスの誕生が新たに描写されます。例えば、5年前、多くの難民がシリアなどからヨーロッパに避難しましたが、その年は総本部では馬小屋ではなく、難民が大勢乗っている小船の中においてイエスの誕生が表現されました。

そこにイエスの誕生の意味が巧く反映されていると思います。イエスの誕生によって神が人間となって私たちと共に住むようになりました。馬小屋や難民の船が示すように、私たちの最も必要な時に、人類の最も必要なところに、神が宿をとって私たちと一緒にいることを望むのです。

今年イエスが生まれるところは、疑いなくコロナウイルスで煩っているこの私たちみんなのいるところです。全人類が共に経験しているこの苦しみと不安の中にこそ、神が私たちと一緒にいてくださり、私たちを支え、慰め、ささやかな希望を与えています。この希望をもって新しい年を迎えましょう。
Merry Christmas!

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp