文字サイズ
  • SNS公式アカウント
  • YouTube
  • Facebook
  • X
  • Instagram

学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.3「儀礼・儀式」

2020年6月17日

例年、5月26日に大学創立記念式典を行い、そこで大学の発展に尽くした「永年勤続者」に対して公式に感謝の意を表すことになっています。しかし、今年は中止となりました。同じく、神言会内では毎年入会あるいは司祭叙階の25周年・50周年などを一緒に祝う習慣があります。今年の金・銀祝は5月の初めに予定されていましたが、もちろんそれも延期となりました。人生の節目に印をつける昨年度の卒業式と今年度の入学式も新型コロナウイルス感染拡大を防止するために中止を余儀なくされました。たびたびメディアを通じても、同じ理由で心待ちにしていた結婚式を延期あるいは中止したり、亡くなられた人のための葬儀ができなくなったりしたという悲しい話を耳にします。

私たちは時折「ただの儀礼」または「儀式に過ぎない」と言って、決まった行動や習慣の意義を疑問にすることがありますが、このような儀礼・儀式ができなくなった今、人生におけるその重要性を再確認することができるでしょう。私の専門分野である宗教学では儀礼は重要な研究対象となっており、儀礼の意義や機能についてさまざまな考察が提供されています。例えば、儀礼に参加することによって、私たちが慣れてきた生活様式を後にして、新しい人生の段階に入るための勇気や希望を見出すことができます。あるいは、儀礼を通して家族や共同体の相互的維持および扶助への信頼を深めようとします。また、普段はなかなか言い表せない感情や願望が表現されることもあります。また、儀礼によって、私たちは自分たちの歴史を思い出し、私たちのアイデンティティを再確認することもできます。儀礼は道徳、義務、慣習を伝え、またそれらを想像する機会となります。儀礼こそが社会生活を可能にする、と主張する研究者もいます。

このように儀礼の大切さを考えますと、慣れてきた儀礼・儀式ができなくなっている現在、新しい儀礼を構築する必要が感じられることでしょう。多くの人々が、オンラインのコンパ、結婚式、葬儀などの可能性を模索していると聞いています。開幕したドイツのサッカーの試合では、選手がゴールを決めるとそれを祝う儀式が新しい形態をとっています。大学も新しい儀礼・儀式の可能性を探っており、来週からは新入生をいくつかのグループに分けて学長講話や課外活動の紹介などを行う試みを計画しています。

皆さんはどんな新しい儀礼を経験しているでしょうか。新しい生活様式を模索しながら大切な人々、時間、気持ちを大事にしましょう。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp