yamazato60 ~YAMAZATO Campus 60+

Share:

Facebook X

YAMAZATO60

学部長が語る南山大学

Faculty of Science and Technology

「貴重な4年間をどう使うか」

理工学部長

大石 泰章

OISHI Yasuaki

南山理工学部の成長と共に

大石先生の「南山ヒストリー」をお聞かせください。

大石氏

南山への着任は2007年、現在の理工学部は当時「数理情報学部」という学部名で瀬戸キャンパスにありました。初めて瀬戸キャンパスへ行った日、地下鉄本郷駅を降りてスクールバスに乗り込んだところ、東へ進むにつれて建物がまばらになり、見える景色も緑ばかりとなって、それでもまだバスは行く。いったいどこへ連れていかれるのだろう、と思ったことを鮮明に覚えています(笑)。丘陵地である元の地形を生かした瀬戸キャンパスは芝生が綺麗で、私の研究室からは地平線に沈む夕日が望め、大好きな風景でした。

南山へはどのような縁で来られたのでしょうか。

大石氏

私の恩師が当時の数理情報学部の立ち上げに関わっていて、声をかけていただきました。私は中学生時代からずっと東京が拠点で名古屋は新幹線で通り過ぎるくらいだったので、名古屋で暮らすことになるとは思っていませんでした。縁というのは不思議なものです。

当時は数理情報学部、そこから学部名も変遷がありましたね。

大石氏

数理情報学部から情報理工学部に名称変更したのが2009年4月、その後2014年4月に理工学部へと改称し、その1年後に「山里キャンパス」に移ってきました。

2017年のキャンパス統合の2年前には「山里キャンパス」に移っていたのですね。大石先生は現在、2回目の学部長就任ということですが。

大石氏

1回目が2018年度から2020年度まで、今回は2023年度より務めていますので、通算して5年目となります。

インタビュー風景

朝から晩までS棟で「暮らす」

先生にとっての「Beautiful Campus」、南山キャンパスでお気に入りの場所はありますか?

大石氏

瀬戸キャンパスのことは今でも懐しく思い出すのですが、今回は「YAMAZATO60」プロジェクトですので、S棟の7階からの眺望を挙げたいと思います。大きなガラス窓から遠くの山々や名古屋の街並みを見渡すことができて、すごく開放感があるんです。S棟には理工学部に必要な機能が集約され、研究室や実験室、会議室もありますし、授業もほとんどS棟で行うため、普段は朝から晩までほぼS棟で「暮らして」います。あと好きなのは秋の紅葉シーズンですね。木々が赤や黄色に色づく風景に心がなごみます。

「暮らす」という感覚なんですね。

大石氏

理系の場合、朝から晩まで大学にいるというのは普通のことです。上級生も下級生も同じ研究室に集い、研究の話やプライベートな話をしたりしながら育っていく。まさに「暮らす」という表現が当てはまると思います(笑)。

「暮らす」、そのひと言に理系学部のエッセンスが凝縮されていて面白いなと思いました。ほぼS棟で過ごされるということですが、メインストリートを歩いたりすることは?

大石氏

特別な用事があるときを除いてほとんどないですね。ちょっと興味深いのは、理工学部の男子学生曰く、「道をわたってメインキャンパス方面へ行くのは気がひける」らしいのです。

確かにS棟とメインストリートのあるキャンパスの間には細い道が通っています。その道のこちらと向こうでは、心の距離もあるということですか?

大石氏

あの細い道に沿ってバリアがあるように感じられるらしい。メインストリート側は女子学生が多いので気恥ずかしいのでしょうか。

S棟の大きなガラス窓から望む名古屋の街並み
S棟とメインストリートをつなぐ道

本質的なことを知るために、学ぶ

大石先生が感じている「Nanzan Mind」とは?

大石氏

「基本的なこと、理論的なこと」を大切にするところでしょうか。最近は社会の変化のスピードが速くて、すぐに役に立つもの、儲かるもの、そういうものに人々の目が向きがちで、かつコスパ、タイパという言葉に象徴されるように、学生たちもすぐに結果がでるものに飛びつく傾向がある気がします。でも南山の教育には、「基本的かつ理論的、すぐに役に立たないかもしれないけれど本質的なことを大切にする」という土壌があると私は思います。

「人間の尊厳のために」という教育モットーを理系の言葉に翻訳するのは難しいけれど、そこにヒントがあるのかな、とも思っていて。つまり何のために勉強するかというと、役に立つから、儲かるからというよりも、「人間が人間らしくなるためには勉強しないといけないんだ」ということではないかと思います。

「理系の言葉に翻訳」とおっしゃいましたが、それはどういう意図で出てきた表現なのでしょうか?

大石氏

南山大学で唯一の理系学部という立場を意識しているからかもしれませんね。文系多数の環境で「どこが共通点だろう、どう話すと着地点を見出せるだろう」と無意識のうちに考えてしまいます。でも、「本質的なことを大切にする」といった姿勢に理系も文系もないと思いますよ。これは南山に来て学んだことのひとつです。

なるほど。私が南山の学生だった頃、南山で唯一の理系学科ということで「情報管理学科」がありましたけど、それは「経営学部」の中の学科でした。

大石氏

情報管理学科が育ち、2000年に独立して数理情報学部、そして現在の理工学部に繋がっています。私もその成長に伴走してきましたので、感慨深いものがあります。あと南山の学生たちはまじめで素直ですよね。

「まじめで素直」その言葉は今回の取材で他の先生方からも聞きましたが、他の大学は違うのでしょうか?

大石氏

もっとドライなんじゃないかと思います。瀬戸キャンパスで印象的だったのは、学生の皆がすれ違うたびに挨拶をしてくれたこと。でもこちらの「山里キャンパス」に移ってからはその傾向が少なくなってちょっと寂しい思いをしています。瀬戸キャンパスはこぢんまりとしていましたので、お互い仲間意識があったのでしょうね。

S棟(2016年)
授業風景
セミナー室での打ち合わせ
ドローンの飛行実験

学びとじっくり向き合う期間を

学生へのメッセージをお願いします。

大石氏

理工学部のカリキュラムは、基本となる土台、理論的な基礎をしっかり身につけてから新しい内容に取り組むようになっています。ただ、学生の皆さんは目の前にある新しいものに惹かれがちで、その気持ちは私もよくわかるのですが、大学での4年間は基本的なことにじっくり取り組める貴重な機会だと捉えて「学び」に向き合って欲しいです。また、先ほど男子学生は比較的おとなしいという話をしましたけど、一方で女子学生は元気があるように思います。

男女比はどれくらいなのでしょうか。女子学生が元気、ということは、「理系だからおとなしい」という公式はあてはまらないような気がします。

大石氏

学科によって違いがありますが、ならすと20%くらいが女子学生です。女子学生で理系を選ぶ人たちは、チャレンジャー気質なのかもしれませんね。

確かにそういう気がします。理系人材は世の中から引っ張りだこだと思いますが、大学院への進学率は高いのですか?

大石氏

そんなに高くなくて20%くらいです。就職状況がいいため学部卒で就職する学生が多いのだと思います。しかし、大学院に行けばより専門的な仕事につくことができますので、もっと多くの学生に大学院に進学してもらいたいと思っています。

S棟北面の夜景
理工学部の女子学生
500人教室での授業風景

私の学生時代にあった経営学部の「情報管理学科」が、今をときめく理工学部のルーツだ、という発見がありました。キャンパス内に「バリア」があるとか、冗談を交えながらお話をしてくださる大石先生のトークに引き込まれ、あっという間のひとときでした。

Profile

理工学部長

大石 泰章 教授

専攻分野

制御理論

主要著書・論文

  • Y. Oishi, T. Iwata, and M. Nagahara, "Infinite-horizon sparse optimal control with a general objective function," in Proceedings of the 2024 SICE Annual Conference, August 2024, Kochi, Japan, pp. 1116–1118.

将来的研究分野

動的システムの数理工学

担当の授業科目

物理学基礎、制御工学基礎