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学長からのメッセージメイルマガジン「EPISTOLA」

No.1「私と日本との出会い」

2020年4月15日

今月学長に就任したキサラです。今年度は入学式のない異例のスタートになりましたが、皆さんは毎日をどのようにお過ごしでしょうか。なによりも皆さんのご健康を祈っています。

ちょっとした自己紹介のつもりで、今回は「日本との出会い」という「物語」を皆さんと分かち合いたいと思います。日本に初めて来たのは1978年、私が21歳の時でした。当時、大学を卒業して、自分には何ができるか試してみようということで短期間のインターンシップのようなものを探していました。結局、一年間ロサンゼルスのスラム街にある高校で教える計画を立てました。他方、ちょうどその時、私の二人の友人は日本で英語を教えることになっていました。ある晩、二人と飲み屋で話していると、かなりしつこく「一緒に日本に行こう」と勧められ、計画を変更したのでした。以前から日本に憧れていたとか、特別な興味を持っていたとか、そういうことではなく、ただ偶然に日本に行く機会を得て、「行こう」と決めたのです。

それから、2年間、南山中学校・高校の女子部で英会話を教えましたが、今まで経験したことのない文化の中で生活して、違う考え方、違うやり方、違う言葉になかなか慣れずに何度も戸惑ったのは事実です。しかし、2年が過ぎ、アメリカに帰る時が来ました。日本で会った皆と別れて空港バスに乗った途端、私は泣いていました。期せずして日本が好きになっていました。日本が自分の人生の重要な一部になっていたのです。いや、厳密にいうと、国や文化といった抽象的ものではなく、日本で会った人々のことを大事に思うようになりました。学校で会った生徒たち、同僚の先生たち、食事の用意など私たちの身の回りの世話をしてくれた人、旅先で会った民宿の人々、バイトで英語を教えた営業部の若い人たち、こうした人々が自分にとっての「日本」を形づくり、その日本が好きになりました。そして、いずれ私はこの「日本」に戻る、心に決めました。

今年の大学のキャンパスは、年度初めにもかかわらず、例年のような賑わいとはほど遠い静けさが待っていて寂しく感じています。一日も早く通常に戻ってほしい、普通の大学生活が戻ってきてほしい、と思っています。しかし、同時に、この異常事態は、世界中の「大事な人々」一人ひとりの命の大切さと、それを守るために私たちが果たすべき相互責任をあらためて自覚する機会にもなっています。感染拡大防止政策に向けて積極的に協力を行い、問題の終息のために私たちなりの貢献をしましょう。

南山大学長 ロバート・キサラ

発行人:南山大学長
発行 :南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp