
日本の教会建築史における
アントニン・レーモンドの位置づけ
― 彼が残したものとその影響 ―
Course
9回目を迎えるカトリック文庫講座。今年度はYAMAZATO60を記念してアントニン・レーモンドをテーマに開講しました。
五十嵐太郎氏(東北大学大学院工学研究科教授)
奥田太郎(南山大学社会倫理研究所教授)
開催報告
2024年は、モダニズム建築を代表するひとりとして知られるアントニン・レーモンドの設計により、現キャンパスに南山大学の校舎が建設されて60年の節目にあたります。レーモンドは、日本における教会建築の歴史を語るうえで避けては通れない、“分岐点”になった人物とも評されていることから、日本の教会建築とレーモンドをテーマとして第9回となるカトリック⽂庫講座を12⽉8⽇(日)に開催しました。

講師には、建築史家としてレーモンドに造詣があり、教会を含む宗教施設についての著作もある、東北大学大学院工学研究科教授の五十嵐太郎先生をお迎えしました。

ライネルス中央図書館1階のレーモンド展示コーナーの前の会場には約50名の皆さまが集まってくださいました。
五十嵐先生の講座は古代からモダニズムをたどり現代までの建築の歴史を概観することからはじまり、自然や置かれた環境を生かすレーモンド建築の特徴を踏まえつつ、他の建築家と比較しながら進められました。その建築全体の歴史のなかで、日本における教会建築史の流れに言及され、さまざまな教会を写真等で具体的に紹介しながら、レーモンドの位置づけと影響を解説していただきました。特にキャンパスに隣接する神言神学院・聖堂は、ある意味、レーモンド自身にとってのモダニズムを超える教会建築の到達点ではないか、との言葉が印象に残りました。

キャンパス全体の設計を任される機会は建築家といえども稀なことで、晩年のレーモンドは日本における活動の集大成として万感の思いで取り組んだであろうとのお話もあり、レーモンド・リノベーション・プロジェクトや図書館のリニューアルを経て60年後もこのキャンパスが大切に維持されていることをレーモンドは誇りに思ってくれるのではないでしょうか。

メイン講座の終了後には、五十嵐先生と南山大学教授・奥田太郎先生とのトークセッションが行われました。ここでは、建築と人との関わりをテーマに、ライネルス中央図書館の「であう」「つながる」「かわる」の3つのコンセプトに関連づけ、哲学・倫理学の専門家である奥田先生と五十嵐先生が縦横無尽に繰り広げる対話に聴衆も思わず惹きこまれ、あっという間に終了時刻を迎えました。

午前中の建築史家・村瀬良太氏の案内によるキャンパスツアーとあわせて、レーモンド建築を堪能することができた一日となりました。
ライネルス中央図書館ではレーモンドに関する資料を数多く所蔵しています。学外の方も利用登録のうえ、館内での閲覧・貸出等が可能です。ご来館をお待ちしています。
村瀬良太さんと巡るキャンパスツアー 南山大学ライネルス
中央図書館