学長からのメッセージ2026年度学長方針
はじめに
今年度から、学長としての第3期を迎えます。新しい任期に入る前に、大学協議会のメンバー一人ひとりと会って、過去の3年間を振り返り、これからの課題について意見を交換することが慣例になっていますが、去年の秋に協議会のメンバーとこうして話し合った時に、共通した感想は、過去の3年間は「忙しかった」ということでした。確かに、過去3年間私たちは大きな課題のいくつかに取り組んで、いろいろと大胆な変革を成し遂げました。その実現を可能にした教職員の皆さまの尽力、学外関係者の皆さまのご支援に心より感謝いたします。これより新執行部体制で、過去の成果をもとに、引き続き劇的に変化している社会のニーズに応え、大学の使命を果たすために全力を尽くしてまいりたいと思います。
国内外の大学関係の会議では、今日大学が直面する深刻な課題が取り上げられます。少子化問題、AI時代における教育の未来、多くの人々が抱く高等教育に対する不信、地域社会への貢献の必要性などが、最近参加した会議では課題として扱われました。加えて、世界レベルでの政治的不安定、戦後の世界秩序の崩壊、自国主義の感情の高まりなどは、私たちが生きる現状を定義しています。これら私たちが直面する数々の大きな課題を前にして、ヨハネの福音書の言葉が心に浮かびます。十字架の死を前にしたイエスは弟子たちに「心を騒がせるな。おびえるな」(ヨハネ14:27)という力強い言葉を残しました。どのような状況にあっても、冷静に事態に向き合うことが肝心だ、という意味を持っているように思います。困難な状況にあることは事実ですが、事態の本質を見極め、的確な判断を下すことで、新しい地平を拓くことができると信じています。
これからの3年間に取り組むべきチャレンジとして、入試制度改革、大学認証評価受審、新グランドデザイン・新国際化ビジョンの策定、大学院教育・研究の充実、社会連携の拡大、健全な財政基盤の確立などが挙げられます。挑戦的な課題に向き合う今だからこそ、「人間の尊厳のために」という本学の教育モットーの重要性を改めて痛感します。「人間の尊厳」が意味するものを、学修者がより具体的に理解するためのサービスラーニングの導入を促進します。
新しい執行部体制にあたり、今回から「学長方針」の様式を変更しました。2026年度からの3年間の任期を視野に入れ、今年度の方針を簡潔に示すこととしました。昨年作成された中期事業計画を基盤として、2年前に掲げた3Ds(Dignity, Diversity, Dialogue)の実践という観点から、今年度の目標を掲げています。
Ⅰ.大学としての戦略
1. 新たなビジョンの策定と建学の理念の継承
- 南山学園創立100周年(2032年)、大学創立100周年(2046年)を見据えて、新たなグランドデザインおよび新国際化ビジョンの検討を開始する。
- 年史編纂および周年事業企画立案を継続的に行う。
- 宗教性の涵養のために、人間の尊厳の実践としてのサービスラーニングを充実させる。
2. ダイバーシティに配慮した大学内環境の整備
- 大学におけるダイバーシティのあり方を検討するために、その中心的役割を担う副学長(ダイバーシティ担当)を配置し、多様性を基盤とした協働の実現を目指す。
- 教員募集・採用、会議体や意思決定過程における構成、学生の正課外活動などにおいて、ダイバーシティに配慮した取組みを進める。
- キャンパス内の体育施設、国際学生寮、情報ネットワーク等の点検・改修を長期的視野から継続的に検討するとともに、ダイバーシティに配慮したキャンパス整備を推進する。
- キャンパス内の多文化交流の充実を進める。
3. DX、AI活用の推進
- 働きやすく、働きがいのある環境の実現に向け、DXの推進、AIの活用等を加速させ、具体的方策を進める。
- DXに基づく教育、アクティブラーニングなど、新しい教育に即した教室などの環境整備を検討する。
4. 基幹教員制度の導入・整備
- 2027年度認証評価受審の準備を進めるとともに、基幹教員制度の導入に向けた検討を始める。
- 基幹教員制度に伴う主要授業科目のあり方を見据え、共通教育および学科科目の科目構成の見直しの検討を始める。
5. 社会に開かれた大学の推進と情報公開
- 同窓会、地域、企業との連携を深め、多様な人材が大学に集う取組みと対話を実現する。
- 南山大学の研究・教育などに関する情報公開を積極的に進める。
6. 人材育成
- FD・SD委員会を起点に、現代の大学に求められる課題にすべての教職員が向き合うためのFD・SD企画を実施する。
- 本学独自のFD・SD企画を他大学にも開放する。
Ⅱ.グローバル化推進
1. グローバル化推進のための新たな仕組みの実践
- グローバル化推進委員会、グローバル戦略センター、国際センターを起点として、南山の国際性をより明確にし、学内連携を強化する。
- 派遣留学、留学生の受入れ、学内およびオンラインでの多文化共修の質的向上を目指す。
2. 派遣留学の充実
- 協定校の多様化を進める。
- 長期・短期留学を促進させる施策を検討する。
3. 留学生受入れの拡充
- 留学生受入れを促進するための外国人留学生別科の新たな取組みを検討する。
- 学部・研究科における留学生の受入れ促進に向けての取組みを継続的に実施する。
Ⅲ.教育
1. 教育の質保証の推進
- 教育実践の可視化を推進し、IRデータに基づく教育の質向上に向けた取組みの共有・改善を推進する。
- 教育の質保証のために導入した仕組みの定着を促進するとともに、学修者が主体的に学ぶための教育の質保証の実質的な取組みを、さらに検討する。
2. 「南山だからできる学び」のさらなる推進
- 時代のニーズに応える新たな教育の取組みを推進させるとともに、南山の教育の強みをさらに強化する。
- 数理・AI・データサイエンスおよび文理融合を反映した教育内容の充実化をはかる。
- 多文化共修と語学教育を含む国際教育の充実を推進する。
- 社会連携、問題解決型の教育実践およびアントレプレナーシップ教育の充実化をはかる。
- 副専攻、レイトスペシャライゼーション(入学後専門決定)、ダブルディグリー、学部教育と大学院教育との接続など、学修者が入学後に学びを広げる、あるいは専門性を深めることができる方策を検討する。
3. キャリア教育の充実
- 長期就業体験実習の実現、1年次からのキャリア教育の充実を進める。
- 就職活動を支援する環境および仕組みを強化する。
4. 大学院教育の充実
- グローバル戦略センターが展開する国際化推進事業を通じて、大学院生の国外での学会発表やフィールドワーク、国際研究等の海外渡航を支援する。
- リスキリング教育やリカレント教育も視野に入れた学部・大学院一貫の新たな大学院学位プログラムの可能性を各研究科で検討する。
Ⅳ.研究
1. 研究力の強化
- 図書館、ラーニング・コモンズ等の学内施設について、研究や授業と実質的かつ密接に関連する仕方での活用のあり方を検討し、教育力と研究力を同時に培う取組みを試行する。
- 挑戦的な研究を支える学内研究費配分体制を検討する。
- 高い研究力を支えるための共同研究施設の充実に努める。
2. 研究支援体制の充実
- 質の高い研究を支える研究公正のための研究倫理教育等を効果的に行う仕組みの充実をはかる。
- 本学教員の研究成果等についての情報集約とその効果的な発信を引き続き推進する。
- 多様な外部資金の受入体制を検討するとともに、成果物としての発明の特許申請等を促進する仕組みを整備する。
- 東海圏の研究者連携の枠組みに貢献する本学教員への支援の仕組みを検討する。
Ⅴ.入学者受入れと高大連携
1. 多様な学生の受入れの推進
- 新たな一般入試・全学統一入試を実施するとともに、そのあり方について継続的に検討する。
- 本学第一志望者の獲得を充実させるために、総合型入試を充実させるとともに、カトリック特別入学審査と学園内および指定校推薦制度の拡充を検討する。
2. 高大連携の推進
- 学園内およびカトリック中学校・高等学校との連携強化を推進する。
- カトリック中学校・高等学校との連携協定を拡充する。
- 学園内およびカトリック中学校・高等学校に向けた教育連携プログラムなどの取組みを充実させる。
- 多文化共修プログラムを高大連携の枠組みで拡充する。
- 中学生・高校生がキャンパスを見学・体験する取組みを充実させるとともに、入学前教育の強化を進める。
Ⅵ.学生支援
1. 学生の課外活動の支援
- スポーツ・文化の両面において、課外活動を正課外活動と位置付け、課外活動への学生の参画を推奨し、各団体の活性化のための取組みを促進する。
- 地域貢献、社会連携、ボランティアなどの学生の課外活動を支援する取組みを推進する。
- 南山チャレンジプロジェクトの取組みを継続的に奨励する。
2. 課外活動の環境整備と学生交流の推進
- 課外活動を通じて学生が成長することができる環境整備を進める。
- 上南戦を含む学生による他大学との交流、高大連携による交流を推進する。
Ⅶ.地域貢献・社会連携
1. 学知の社会還元
- 本学の教育・研究実践に関する情報集約に基づく効果的な広報を実施し、現行の活動の魅力を広く社会に伝える安定的な体制を検討する。
- 研究所・研究センターの運営体制の一部標準化を行い、学外者の目に活動の魅力が伝わる発信のための情報集約を行う。
- 図書館・博物館のもつ知的資源をより積極的に社会に還元する事業を推進する。
2. 社会連携の推進
- 2025年度に試行した事業を含む既存の社会連携的事業の一部を集約し、社会連携センター設立を検討する。
- STATION Ai連携事業、NANZAN SPARKの実施を継続し、学内外での認知度を向上させる。
- 現代の社会的ニーズと本学の強みを勘案しながら、南山エクステンション・カレッジのあり方の見直しを始める。
Ⅷ.おわりに
今年度の学長方針を構想するなかで、私はイエスが弟子たちに伝えた言葉である「心を騒がせるな。おびえるな」を思い出しました。今年度も取り組むべき課題が多く、私たちが生きている環境はますます厳しくなることが予想されます。このような困難な状況にあっても、事態の本質を見極め、的確な判断を下すことで、100周年に向けた南山大学を作り続けましょう。これらの目標の達成のために、皆さまとともに働くことを楽しみにしています。