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キャンパス・校舎探訪キャンパス・校舎の歴史・沿革

山里校舎構想

当時、新校舎建設において中心的な役割を果たしたのは、のちの初代南山大学長アロイジオ・パッヘ神父であった。以下、『南山学園の歩み』(1964)よりパッヘ神父の言葉を一部抜粋。

「パッヘ学長が希望してきた綜合学園 ― 幼稚園 、小学校、 中高校、 大学、 大学院までを擁する大南山の構想を語り、(一部省略)百年以上さきのことを考えて計画をたてたかった。― 許されれば最初から広い場所を得て大学を建設し、学生に甘美な思い出を残させたい。 しかし古い大学は小さい所からはじまった。 学部組織も急いでは良い大学はできない。 いずれにせよ成長しなくてはならない。 そのために土地が必要である。― と未来の綜合大学のために広い土地を希望した。」

「昭和二十三年(1948)十二月九日の理事会は、隣接地の五軒家町、駒方町、隼人町、 南山町にわたる約二万坪と、 将来の大学移転を考慮して楽園町、 八雲町、 山里町、 山手通り、 滝川町にわたる約十万坪を購入する案を採択。 二十四年(1949)五月十五日の理事会は八雲町、 楽園町、 山里町方面の土地買収のため米国からの補助金四万五千弗をふりむけること、 滝川町の真宗専門学校の土地と建物、 南山町の土地購入その他を決議したが、 これらの決定事項は昭和二十九年(1954)にかけて漸次実現されていったのである。」

パッヘ神父の構想を具現化するべく、神言修道会会員をはじめとした南山学園関係者が情熱と理想をもって取り組み、建築家アントニン・レーモンドとの出会いによって結実したのが、南山大学山里校舎なのである。

瀬戸キャンパス 歴史・沿革(2000年~2017年3月)

1963年10月の工事状況(南側から臨む)

新校舎構想図を背にした初代南山大学長アロイジオ・パッヘ(『卒業アルバム1952』)

新校舎構想図(『卒業アルバム 1952』)

移転前の五軒家町の大学校舎スケッチを背にした第2代南山大学長沼澤喜市(『卒業アルバム 1958』)

キャンパスの建設

南山大学山里校舎ができるまで、いりなか周辺には市電の停留所はあったが、周辺にはそば屋「守鍵」と食堂「清栄」に、たばこ屋と一、二軒の家があるのみでそのほかは田圃であった。聖霊病院から東には家はやはり一、二軒しかなく、八事療養所のみがあった。新校舎建設予定地には人の背丈ほどの松と雑木がまばらに生えている荒れ地で、道路の境界もはっきりしないほど雑草が生い茂っていた。

1961年8月、当時の南山学園理事長ゲルハルト・シュライバー神父は、山里地域における南山大学総合計画を依頼するため、知人でチェコ人の建築家アントニン・レーモンドの来名を招請した。レーモンドは、直ちに来学し、新校舎建築予定地を歩き回り、計画の基本構想を得て、学園にこう伝えた。「敷地を南北に貫く尾根の細い道、敷地の背骨のような道、東西南北に素晴らしい眺望を持つので、この尾根を敷地計画の基本とすることを決めた」。自然との調和と機能を重視し、簡素で堅牢な設計の基本理念は、学園理事会の意に沿うものであった。その後すぐ当時の南山大学長であった沼澤喜市神父を委員長として、新校舎建設委員会が発足され、着々と山里の地に南山大学の校舎が建っていったのである。

レーモンドが山里の地に立ち、その土を手のひらにのせ、こう呟いたという。

「校舎外装のメインカラーは、この赤土と同じ色に。」

その後、レーモンドの意向をうけ、建設会社の塗装担当者は何度も何度も色素材を調合し、あの南山大学校舎独特の赤土色のペンキを作り出したのである。

1964年3月に建設工事は完了し、5月に祝別式、落成式が第2代学園理事長・松岡孫四郎司教の手で執り行われた。

1960年代半ば頃から、日本では高度経済成長が顕著となり、南山大学においても大学紛争へつながる運動が見られるようになった。校舎の壁にペンキで抗議声明が書かれ、学生が立てこもる教室に機動隊が突入することもあった。

その後、幾多の増設を経て、現在の南山大学のキャンパスにいたる。

完成した山里校舎(1964.7)

礎石に名簿などを納めるボルト神父(1964.5.29)

赤土色の校舎(第1研究室棟)

参考文献

受賞

1965年 日本建築学会賞受賞

受賞講評

「高価な仕上材の美しさや特異な構造体の奇抜さに頼ることなく、与えられた自然との調和と機能的な校舎群との結びつきのなかから、これまでに見られなかった大学校舎群の新しい空間的秩序を創造したことは、高く評価されなければならない。」

日本建築学会賞受賞(本部棟1F石碑)

1965年 建築業協会賞受賞

建築業協会賞受賞(本部棟1F石碑)

2002年 第12回 BELCA賞ロングライフ部門受賞

受賞講評

「小高い丘陵の屋根と斜面を最大限に活かしたいわば自然共生型の大学であり、豊かな緑の中で学園生活が送られている。日照、通風を享受し、根強い日差しを制御するルーバーは立面を引き締めるとともに外壁を守る役割を果たしている。初めから設けられた屋根地下の共同溝は、今日までのさまざまな設備の更新に寄与している。設計の高い質と日常の手入れの良さが施設を経済的に長持ちさせている好例である。」

BELCA賞ロングライフ部門受賞(本部棟1F石碑)

2020年 第27回愛知まちなみ建築賞受賞

受賞内容

Q棟

受賞講評

「高低差のある地形に馴染む建築であり、コンクリート打放しの構造体とプレキャストコンクリートのルーバー、赤土色の外壁など、キャンパスの歴史的意匠を踏襲している。先人の建築家が作り出した意匠と、長年積み重ねられた歴史的景観に対するリスペクトが十分に表現されており、まちなみ建築賞に相応しい。」

愛知まちなみ建築賞受賞

2020年 第4回インフラメンテナンス大賞文部科学大臣賞受賞

受賞内容

レーモンド・リノベーション・プロジェクトによるキャンパスの改修

2021年 第30回BELCA賞ベストリフォーム部門受賞

受賞内容

レーモンド・リノベーション・プロジェクトにより改修したG30・G棟・F棟・H棟

BELCA賞ベストリフォーム部門受賞(G棟入口)