yamazato60+

2025.06

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南山大学3研究所合同企画
(YAMAZATO60+関連イベント)

「人と自然のふさわしい装い(尊厳)を求めて
-南山レーモンド建築の過去・現在・未来」の開催報告

南山大学3研究所が主体となって企画された表記、合同イベントが、5月16日・17日の2日間にわたって開催され、無事、成功裡に終了しました。2日間の合計6種類の企画について、写真と共に、当日の様子も含めて以下にご報告いたします。

オープニング・セレモニー

オープニング・セレモニーの冒頭、ロバート・キサラ学長から、今回のテーマに関する創世記からの引用も含めた、印象深いご挨拶を賜りました。それに続いて、研究推進・教育支援担当副学長の奥田太郎先生からは、YAMAZATO60+の関連企画、3研究所合同企画であるとの観点から、本学学生や教職員にとって大学教育や研究遂行に相応しいキャンパスと建築物を設計し造り上げた、レーモンドの功績を学ぶことの意義深さについて語っていただきました。

(オープニング・セレモニー開催直前のフラッテン・ホール会場)

2025年5月16日(1日目)

オープニングに続く最初の企画は、南山宗教文化研究所によるもので、美学美術史を専門に研究なされ、近年、レーモンドに関する著書を出版なされた立命館大学ヘレナ・チャプコヴァー准教授による「南山大学におけるアントニン・レーモンド」と題する講演会でした。チャプコヴァー先生のご家庭の事情により、急きょオンラインによる講演会に切り替わったのは残念でしたが、むしろ、チェコのプラハと名古屋とを結ぶオンライン講演会がすぐさま見事に実現したことを、驚きをもって受けとめる声の方が多くありました。また、大きくスクリーンに映し出された先生を拝見しながらのご講演からは、チャプコヴァー先生のレーモンド研究にかける意気込みや迫力が十分に伝わってきました。

この講演会は、メインのフラッテン・ホールだけでなく、レーモンドが手がけたG30教室ともオンラインで繋ぎ、2会場で行われました。フラッテンホールには280名ほど、G30には300名ほどの聴衆が集まり、大変盛況な講演会となりました。

初日、2番目の企画は、講演会終了後に催された、チェコ語のビデオと日本語による日本の放送局で放映された2本立てのビデオ上映会でした。チェコ語のビデオは8分間と短いものでしたが、チャプコヴァー先生があらかじめ10分程度の日本語による解説を施して下さり、それに続く上映でしたので、放映内容を十分に理解することができました。続く、日本の民放による、有名建築物を映像で紹介する45分間のドキュメンタリーでは、レーモンドが軽井沢に建設した「夏の家」や「新スタジオ」の紹介があり、映像の解像度も素晴らしく鮮明で、迫力のあるビデオ上映会となりました。この上映会は、2日目の午後にも全く同じ内容で開催され、2回の上映会で合わせて150名ほどの来場者がありました。

また、初日と2日目の午後には、人類学研究所による「南山大学レーモンド建築をめぐるキャンパスツァー」が企画されました。

本企画では関西学院大学の濱田琢司教授に解説役をお願いし、第一研究室棟、G棟、M棟やK棟、神言神学院、グリーンエリア、本部棟や正門をめぐりました。ふだん南山大学で過ごしている教職員や学生にとっては新たな発見を、外部からご参加の方にはレーモンド建築に触れていただく機会をもたらしてくれたと思います。2日目はところどころで雨に降られましたが、みなさん熱心に濱田先生の話に耳を傾けておられ、充実した時間を過ごすことができました。

2025年5月17日(2日目)

2日目、5月17日、午前10時からは、南山宗教文化研究所の英語によるWorkshop企画として, “The role of nature in architecture in the Anthropocene ”と題して、ノルウェー、チェコ、日本という国際色豊かな発表者による「建築と自然との関係」に関する興味深い発表とディスカッションが行われました。ノルウェーからのBendik Manum教授による: "Inspiration from Japan regarding how to think of nature“、同じくノルウェーからのGro Lauvland教授による: "Architecture as art of place? Satoyama and a poetic form of understanding”、篠原雅武教授による: "Inquiry into the problem of architecture in terms of the redefinition of Nishida's notion of place”、そして最後にHelena Čapková 准教授とオンラインでプラハと繋いで: "Nature in architecture designed by Antonín and Noémi Raymond"という、いずれもきわめて質もレベルも高度な内容による発表の饗宴(シュムポシオン)となりました。ディスカッションは、フロアーからの興味深い質問もあり、時間ギリギリまで議論に花が咲きました。

2日目は、上記のWorkshopと並行して、ライネルス中央図書館のNANTOルームを使って、南山大学社会倫理研究所の企画で「建築と空間に関する哲学カフェ〜その神聖性と歴史的美的価値をめぐって」が開催されました。社会倫理研究所・人類学研究所・南山宗教文化研究所からそれぞれ研究所員が参加し、濱田琢司教授にもご参加いただき、フロアの皆さんと「神聖性」と「歴史的美的価値」をテーマに哲学的な対話を続けました。多分野・多職種の参加者がおり、2時間という時間があっという間に過ぎました。

2日目の最後には、日本語によるワークショップ、「現代日本の建築デザイン実践における自然を考える」が催されました。コメンテータを:清水郁郎教授、そして発表者として、午前の英語によるWorkshopにも参加なされた篠原雅武教授、続いて川島範久准教授による:「自然とつながる建築をめざして」、能作文徳准教授による:「民家はきのこ」および「都市菌(きのこ)」、最後に建築家の常山未央氏による:「弱い力でつくる居住域」といった、いずれも力作揃いの意欲的な発表が続き、4時間の長丁場だったにも拘らず、あっという間に時間が過ぎた感じでした。ディスカッションも、フロアーからの神学思想と自然への理解や実践を切り結ぶコメントなどが相次ぎ、用意された時間では到底足りないと思われるほど活発な議論が印象的でした。

初の3研究所合同企画を終えて

わずか2日間で3研究所合同による6種類8企画という、「超」盛りだくさんのイベント企画でしたが、アントニン・レーモンドという建築家の、建築学に留まらない思想の奥深さ、経験の豊かさ、発想の柔軟さ、そして恐ろしいほどのあらゆるものへの関心の強さ、骨太さと繊細さとを併せもった嫋やか、かつ重厚な懐の深さといったものを一気に味わうことのできた2日間でした。それでも、「もっと聴きたい、もっと知りたい、もっと話して欲しい」、そのような欲求が、それぞれの企画、そして全ての企画が終わった後に遺っていた余韻だったように思います。ということは、来場者数の大小に拘らず、大成功のうちに本企画は終わったと言って良いのではないでしょうか。

南山大学3研究所合同企画ワーキング長
山田 望

研究所総合委員会委員長
石原 美奈子

南山大学3研究所合同企画ワーキングメンバー
宮脇 千絵・Enrico Fongaro・森山 花鈴

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