
店長インタビュー(咖哩日和店長:力武さん)

今回は、咖哩日和の力武店長にもお話しを聞いてみました。
お店の特徴や、日ごろ接している南山生に感じること、キャンパスの好きなところなどを質問してみました。
学生の声から生まれた学食の進化 ―
カレーからどんぶり、そしておうどんへ
この学食はいつから営業されていますか?
3年目に入りましたね。コロナ明けから営業しています。
この学食の特徴を教えてもらえますか?
元々は桜山でカレー屋さんをやっているので、スパイス料理が特徴です。桜山のお店では燻製料理も出しています。
南山では当初、カレーでスタートしたのですが、うちのカレーは、意外とコストのかかるカレーで…。なかなか学生さんの懐事情的には、気軽に食べられるものではない、ということで、もっと気軽に食べられるものを!と思い、どんぶりのメニューを考案しました。今では大学オリジナルのどんぶりを6種類販売するようになりました。お米の価格の高騰で少し値上げしてしまったのですが、ほぼ500円台で食べられるようにしています。

すごい。学生さんのニーズに合わせて、大学独自のメニュー開発をしてくれているのですね。
そうですね。今年の4月からは、使っていなかった半分のスペースを活用して、おうどん屋さんを始めました。これは、1年くらいかけて、学生さんにリサーチをしました。注文を受けながら、「ここに何屋さんがあったら嬉しい?」というような話をずっと聞いたんです。その結果、ざっくりと言うと、麺のお店がない、ということになりました。特に要望が多かったのは、ラーメンとおうどんでした。

ラーメンは、味のバラエティーはあるのですが、全部を網羅することは難しい…醤油ラーメンが好きな人もいれば、味噌ラーメンが好きな人も、とんこつラーメンが好きな人もいる。そうなると、どうしても皆のニーズに合いにくい。あとは仕込みの量が難しい。スープを仕込むのはすごく大変で、鶏ガラを取って、さらにカレーを作って…となると、なかなか大変で。

一方、おうどんだったら、つゆは1種類。あとは、天ぷらとかキツネとか、乗せるトッピングでバラエティが出せるので、おうどんにしよう、と。ラーメンに比べると原価が全然ちがうので、値段も抑えられます。おうどんの方が、アレンジが効きやすく、万人受けしやすい、ということもあり、おうどん屋を始めることにしました。
取材をしていても、うどんを食べている学生さんの確率が高かったです。
そうですか。今日は木曜日ですが、おうどんの売上は、実は水曜日の方が高いです。水曜日の午後は授業がないので、食べに来てくれる学生さんが多いです。どうしても午後に授業がある日だと、次の教室の席を確保しておきたいみたいで、メインストリートでお弁当を買って、教室で食べる、という方が多いようです。

意外でした。水曜日は午後に授業がないので、学食にはあまり人がいないのかと思っていました。
逆に、水曜日は、メインストリートはあまり売れないですね。そのまま帰っちゃう人は見向きもしない。
水曜日だと、食堂まで来て、おうどんやカレーを食べていってくれます。
未経験からの挑戦 ―
南山大学で生まれた“学食うどん”の舞台裏

今年の4月からうどん屋を始められたとのことですが、元々うどんの経験はあったのでしょうか?
初めてです。うどんも天ぷらも経験がありませんでした。出汁屋さんを紹介してもらって、つゆの出汁の取り方から教えてもらいました。出汁の配合も自分で出汁屋さんにお願いして、オリジナルのものを作ってもらって、かえしもメーカーに要望を出して、3か月くらい試行錯誤しましたね。そのお出汁を毎朝、厨房で取っています。
麺は、今は冷凍の技術がすごいので、讃岐系の冷凍のものを使っています。ストックのしやすさも良いですね。あとは仕入れ先にお願いして、分量を上げてもらいました。普通の冷凍うどんは一玉200グラムなのですが、うちのは220グラムにしてもらっています。
すごい!それは、学生さん向けに?
そうです。学生さんに満足してもらえるように、ちょっと多くしています。それでもさらに大盛りを頼む子が多いですね。大盛りだと1.5倍なので、300グラムを超えますね。普通のうどん屋さんの大盛りよりも全然多いのですが、意外と残さず皆さんペロっと食べる感じがします。天ぷらもたくさん買う子だと、3個、4個買ったりしていますね。

南山大学への出店前に思っていたことと実際に営業してみてから、何かギャップはありましたか?
桜山のお店はすごく小っちゃいんですよ。10席前後のお店で、そんなに量が出るわけではなくて。一方で、大学では給食みたいに大量に調理します。大量調理は経験がなくて、その調理の仕方は、最初慣れなくて大変でした。
全く違う形態での出店ということなんですね。出店に際しては何か悩まれたりしましたか?
今はもう売却してしまったのですが、元々パン屋さんもやっていたんですよ。メインストリートでも販売していました。ぶっちゃけたところ、このパン屋さんがすごくコストがかかっていて、ランニングコストでパンクしそうだったんです。どこか別で売り上げを作らなければ、と思っていたタイミングで、大学への出店の話をいただいたので、僕にとっては渡りに船でした。

ちょうど良いタイミングでの出店になったのですね。
あとは、南山の周辺環境もあると思うのですが、お子さんのいらっしゃるパートの方が楽しく働いてくれています。大学には冬休みや夏休みのような長期休暇があるので、その間お店も休業になるのですが、皆さん子どもと一緒に過ごせる、と言って喜んで休んでもらえます。普通に社員を雇うとなると、経済保証ができなくなってしまうのですが、ゆとりのある方が働きに来てくれているんだな、と。
優しい学生と緑豊かなキャンパスに惹かれて ―
商売以上の価値を求める店長の想い

実際に出店してみて、南山生に対してはどのような印象を抱いていますか?
良い子が多いな、というのは正直なところ感じています。礼儀がきちんとして、ハキハキしているというか。特にお店が混んでいる時とかはすごく並ぶのですが、全然もめないですね。うちのスタッフたちがもたついている時も優しく待ってくれます。
このキャンパスについてはどう思いますか?
緑がすごく多いですよね。最初、初めてここに来たときに、こんな都会にこんな自然があるんだって、ちょっと感動しました。
僕、元々建設業をしていたんですね。だから本部棟の建物を見ると、結構貴重な建物なのかなと思います。すごく珍しいです。
それはどのあたりが?
あの杉の板ですかね、型枠の板がおそらく合板ではないですよね。コンクリートの木目がすごく貴重なのでは、と思いますね。

あとは打ちっぱなしというのも、その当時ではあんまりないのかと。総務課の方との打ち合わせで本部棟の2階に行くと、窓枠のところにコンクリートのベンチがありますよね。あれは珍しいし、今ではコストが高すぎて作れないんじゃないかな、と思いますね。

建築業をされていただけあって、プロの視点ですね。
何か今後やってみたいことはありますか?
そうですね。いずれは南山の学生さんにも働いてもらえたら、と思っています。例えば、どこかの部活の子たちが伝統的にこのお店のアルバイトを引き継いでくれると嬉しいですね。
授業の空きコマに1時間でも良いので、ピーク時に働いてくれると。ここだと通勤時間もゼロなので。そんなに高い時給は出せないのですが、まかないはしっかりお腹いっぱいつけますので(笑)
ちなみに、学生さんに取材をしていると、「安さ!」「ワンコイン!」を求める声が多いですが、ぶっちゃけた話、どのように感じますか?
今、お米の値段がすごいんですよ。ここを始めた3年前と比べたら、今は3倍になっていて。
あとは容器もすごく高いですね。イートインとテイクアウトで同じ値段で提供しているのですが、その分はうちで吸収していることになりますね。結構ギリギリのところでやっています。
でも、実は、あまり「商売」という気持ちを強く持ってはいません。

たしかに、店長のお話を聞いていると、儲かるため、というよりは何か想いのようなものを感じます。
そうですね。この環境でお店をすることはなかなかできるような体験ではないと思っています。大学の中に入る、というのは、色んな人の信頼を借りて、学生さんのために食事を提供させていただいているんだと。
僕も50歳を過ぎて、未来ある学生さんを見守りながら、少しでも社会貢献してるのかな、と考えています。
あとは、今、僕の母親とそのお友達も一緒に働いているのですが、母親が駅から歩いてくる途中にお友達とおしゃべりしている姿なんかを見ると、多少なりとも親孝行になっているかなと。当初は、あの坂にハァハァ言っていたのが、今では歩けるようになったり。母親がお友達や学生さんと楽しくおしゃべりしている姿を見ているといいなと思いますね。普通の飲食店だと利益のことを考えないといけないけど、やっぱり大学という環境だからこそできる親孝行みたいなところはありますよね。
すごく素敵なお話を聞けました。
最後に、
学生さんや南山大学にメッセージをお願いします。

長く続けさせてください(笑)
普段、学生さんを見ていると、何がそんなに面白いんだろうというくらい笑っています。自分がやってこなかったような学生時代を過ごしているなと思っています。なかなかやりたいと言ってやらせてもらえる場所ではないので、良い環境でお店を続けていきたいと思います。こればっかりは大学の人に応援してもらわないとね。学会の打ち上げや、サークルの懇親会等でも気軽にご相談ください!(笑)
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