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南山のDNA 先輩インタビュー 鷲津 翔太 さん

情報理工学部システム創成工学科 2013年3月卒業
理工学研究科機械電子制御工学専攻 博士前期課程 2015年3月修了

鷲津 翔太 さん

アイシン精機株式会社(走行安全第一制御技術部 先行開発グループ)
(2019年1月取材)

モノづくりに関心を持って情報理工学部システム創成工学科※に入学後、制御工学の研究に熱中し、本学の理工学研究科機械電子制御工学専攻博士前期課程に進学。修了後は、興味があった自動車業界で専門性を生かそうと考え、自動車部品メーカーに入社。自動運転システムに関する技術の先行開発に携わる。

現在の理工学部機械電子制御工学科

100年に一度の大変革期にある自動車業界で、
大学院まで続けた研究を生かし、先行開発に挑む。

「モノを思い通り操る」制御の研究に夢中になり、大学院へ。

1・2年次に幅広い工学の分野を学び、3年次という早い段階から興味を持った分野の研究に取り組める――南山大学の理工学部には、そんな魅力的な学びの体系がありました。私が関心を持ったのは、「モノを思い通り操る」ことができる制御の分野。研究テーマは「人工衛星の姿勢制御」です。無重力であることをうまく利用して、限られた燃料で人工衛星を効率的に動かし、目標の姿勢に制御することが課題。言葉にすると簡単でも、制御に不可欠な数式モデル化が極めて難しく、だからこそ大学院に進学して研究を続けるほど熱中しました。そして修士課程で、新たな手法を用いることで課題を解決できるという結果を見出し、達成感を味わうことができたのです。

厳しさのある研究室で、多くの学びと、人とのつながりを得た。

研究室の先生は、学生だからと甘やかすことなく、一定の研究成果を求める方でした。その分、何時間もつきっきりで指導してくださるほど熱意のある方でもありました。おかげで夜通し研究を続ける苦しい時期も乗り越えることができ、論文が国際学会で認められた際には、成果を世界の研究者に知ってもらえるという、このうえない大きな喜びを味わうことができました。また、研究室の先輩や後輩と一緒に研究を行う過程では、ときには意見が対立しながらも同じ目標のために協力し合い、上下のつながりも強いものになりました。現在でも節目には、先輩や後輩と交流を交わし、学生生活を共に過ごした同期とも、大きな休みには顔を合わせています。研究に打ち込む環境の中で、かけがえのない人々と出会うことができました。

「ホテルのボーイ」のような自動駐車システムを先行開発。

現在の会社に入社したのは、縁があってインターンシップに参加した際に、実際のモノづくりに触れ、クルマの中身を提案する部品メーカーで制御システムの開発に携わりたいと考えたからです。自動車が100年に一度の大転換期にある中、私が担当するのは自動運転システム、特に「自動バレー駐車システム」の先行開発です。これは、駐車場入り口でクルマを降りて、ドライバーが車外からスマートフォンを操作すれば、ホテルのボーイにキーを渡した場合と同じように、自動で駐車や出庫をする技術。その中でも、シフトやハンドル、アクセル・ブレーキを用いて車両の動きを制御することが私の担当です。交通事故の3割を占める駐車場での事故の防止や、駐車スペースの有効活用に貢献する技術、何より人々を駐車の煩わしさから解放し、便利な社会を創る技術を世界に先がけ実現することを目標に、開発に励んでいます。

専門知識に研究プロセス。南山の研究室でのすべてが今に通じる。

仕事には、大学の研究で経験したすべてが生きています。高い安全性が求められるクルマを相手に、まだ世の中にない技術に挑めるのは、制御の専門知識があるからこそ。正解がない中、自分で課題を設定して実行し検証を重ねるプロセスや、進歩の著しい類似研究の英語論文の調査、同じ分野の仲間との議論といった、大学時代の研究への取り組み方も、現在の仕事に通じるものです。チームで研究を行って身についたマネジメントスキルも、大いに役立っています。部下に対して心がけているのは、成果に対する厳しさを持つ一方で、意見や指摘を聞き入れること。大学での研究を通じて持つようになった「先輩・後輩の関係でも、技術では対等」という考えを、今も大切にしています。

仲間とともに目標に向かい、達成する。その経験は一生の宝。

私は入学当初から大学院に進学しようと決めていたわけではありません。しかし南山大学で夢中になれる研究に出会い、懸命に取り組む中で、多くの学びを得ました。みなさんも、勉強やそれ以外でも、何か一つでいいから目標を立て、仲間と呼べる人たちと議論を交わし、やり遂げる経験をしてほしいと思います。その途中には辛いこともあれば、仲のいい相手と衝突することもあるでしょう。けれどその分、乗り越えたときに分かち合える達成感は、決して他では味わうことのできないもの。何気ないやりとり一つも、その後の人生の力や自信になる――そう思うのです。

(2019年1月取材)