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南山のDNA 先輩インタビュー 三浦 昂 さん

法学部法律学科 2005年3月卒業

三浦 昂 さん

トヨタ車体株式会社 総務部 広報室 ダカールラリー推進グループ グループ長
チームランドクルーザー・トヨタオートボデー ドライバー
(2018年4月取材)

トヨタ車体株式会社の社員ドライバーとして、世界一過酷なモータースポーツと言われるダカールラリーに参戦。日頃はラリーに向けたフィジカルトレーニングやマシンテストのほか、広報室の一員としてラリーに関する広報業務も担当。

自分で決めた以上、何としてもやり抜く。
大学時代の決意が、ダカールラリー優勝の栄冠に。

「司法書士兼レーサー」をめざし、法学の学びと部活動に励む。

F1ドライバーを夢見た幼少期。成長するにつれ現実が見えてくると、その夢は「将来、アマチュアでレース活動を」という目標に変わりました。南山の法学部に進学したのは、周囲にいた活躍する大人に南山のOBが多く、「法律の専門家となって、スポンサーを買って出てくれる企業経営者などとの人脈を築けないか」と考えたことが理由です。入学直後にはできる限りの授業を受けて学びの方向性を定め、2年次からは司法書士の資格取得をめざして学ぶ一方、自動車部でジムカーナ競技に打ち込みました。10人に満たない弱小の部でしたが、一度くらいは結果を残そうと技術を磨き、最後の大会で対戦相手に勝利。一方で、4年次夏に受けた司法書士試験は、残念な結果に終わりました。

南山での出会いが導いた、社員ナビという願ってもいない進路。

司法書士試験に再挑戦する意欲を持てずにいたある日、就職も検討してみようと考え、初めてキャリア支援室へ足を運びました。職員の方に面談していただき、車に興味があることを話しましたが、時期が遅く、唯一追加募集をしていたトヨタ車体も、2日前に受付を締め切ったタイミング。ところがその職員の方が、南山OBでもあるトヨタ車体の人事担当者に問い合わせてくださり、面接していただけることになったのです。訪れた本社の会議室には、ダカールラリーのポスターが。そこで初めて、トヨタ車体がラリーに参戦していること、社員ナビゲーターへの道があることを知りました。あくまで一般社員としての就職活動でしたが、思わぬ形で夢への道が拓けました。

ナビゲーターを経てドライバーに、そしてついに手にした優勝。

入社の翌年、社員ナビ候補に選抜されて2007年からダカールラリーに参戦し、優勝も経験しました。2016年からドライバーに転向し、3回目の2018年大会で市販車部門優勝を果たしました。ペルー~ボリビア~アルゼンチンの約9,000kmを15日間かけ走行した今大会は、果てしない砂丘に高さ30~40mの砂の壁がいくつも出現するなどサバイバル色の強いコース。アクシデントからのリスク回避と、アグレッシブに攻めていきたい葛藤や、連日深夜に及ぶ運転時間、同じチームのもう1台のリタイアによる勝利への責任など、精神的にも肉体的にも過酷なものでした。それでも信頼するナビをはじめチームやサポートスタッフの力を得て、ミッションを遂行。今後もチームに信頼してもらえるドライバーとしてのさらなる成長をめざしていきたいです。

市販車部門優勝トロフィー

途中で断念した大学時代の悔しさが、苦しくてもやり抜く力に。

南山での出会いや経験は、確実に現在につながっています。夢見た世界に挑めているのは、頼れる味方に出会えたおかげ。また、現在のチームは半数がフランス人ですが、チームメイトと苦手な英語で話す際には、南山のキャンパスであたりまえに目にした、外国人と日本人の学生が交流する光景が励みになっています。そして、レースを勝ち抜くうえで力となっているのは、「自分で決めたことを何としてでもやり抜こう」という大学時代の決意。あこがれの道に進めたとはいえ、司法書士試験を途中で断念したことは、実はとても悔しい決断でした。「同じ挫折を味わいたくない」という想いが、特別な才能があるわけではない私がどれだけ打ちのめされてもやり抜けた原動力です。

誰かが通った道ではなく、自分で考えてこそ挑戦の意味がある。

私はレーシングドライバーである前に、一会社員です。業務としてレースに参戦し成果を求められる中、「その方法で勝てるのか?」を常に問われ、最良だと自信を持って言える方法を自分自身で考え臨んでいます。南山大生の皆さんに伝えたいのは、前例にとらわれたり、前人未踏のやり方に恐怖を感じたりせず、自分で方法を考え出してほしいということ。情報化社会の今、新しいチャレンジをする際、多くの人がまずネットで検索して、誰かと同じ道をたどろうとするでしょう。しかし自分自身で考えることが、チャレンジにおいて大切だと思うのです。そのプロセスを経てこそ、未知の世界に飛び込む恐怖心が消えて自信が芽生え、新しい価値や魅力を生み出せると信じています。

(2018年4月取材)