南山の先生

学部別インデックス

研究所・社会倫理研究所

MERE,Winibaldus Stefanus

職名 准教授
専攻分野 国際法(人権法)
主要著書・論文 “Recent trend toward a balanced business and human rights responsibility in investment treaties and arbitrations”, International Journal on Human Rights and Business, Vol.4, No.2, pp. 1-16, 2020.
将来的研究分野 企業・人権・霊性(神学)の関連について
担当の授業科目 政治・経済と人間の尊厳
宗教論
人権をめぐって

自分の「人権」を知る

 生きること、そしてそれに伴う食べること、飲むこと、教育を受けること、仕事をすること、家に住むこと、健康に生きること、自由に移動したり、発言したり、信仰したりすること、財産を持つこと、参政すること、これらは当たり前のように我々の日々の生活に付随しているものであるため、実際にはそれらが何なのか、なぜそのようになっているのかあまり深く考えたりしないかもしれません。
 一言で言いますと、それらは私達が人間として生きていくために付随している権利です。よく知られている表現にすると、それらこそが人間としての我々の「人権」なのです。人間である限り、その人種、国籍、性、年齢、宗教、地位などを問わずに、全ての人が基本的な権利を持っています。
 勿論、先にあげた権利はわずかだけですが、全ての権利を大きく分けますと、市民的政治的権利もあれば、社会的政治的文化的な権利もあります。つまり、人間の様々な生活の側面において、それぞれに伴う権利があります。それらの権利を侵害したり奪ったりしますと、人間としてふさわしい人生を送っていくことができなくなります。ですから、我々の人権となるそれらの権利を尊重・保護・成就する必要があります。
 そのために、我々の「人権」が国際法、または、国内法によって保護されることになっています。法律によって保護されているということは、誰もがそれらの権利を侵害したり、奪ったりしないためです。そして法的には、国(政府)が我々国民の権利を保護する第一責任者となっていますので、国内で誰かが他の人の権利を侵害したり奪ったりする場合に、法的責任を追求し、刑罰も与えることができます。
 しかし、場合によっては、国民の人権を保護するべき第一責任者である国(政府)が自らの国民、または、他国の国民の人権を侵害したり奪ったりすることになり得ます。これは独裁国家、または、法律の支配が弱い国においてはよくあります。「人権」への保護制度が弱いため、あるいは、欠如しているため、いつでも自国民の「人権」を侵害したり奪ったりする可能性がありますので、国民が不自由で不安と恐怖のうちに生活することになります。
 そして、政府が他国と戦争をすることによって、他国の国民の「人権」までも侵害し奪うことにもなり得ます。その場合、国内での法的責任を追求したり、刑罰を与えたりすることが困難になるため、国際法と国際機関によって法的責任を追求し刑罰を与えることができます。
 その他、社会組織による「人権」への脅威もあります。最近、企業はますます注目を集めている社会組織の一つです。企業は従業員や労働者、更に消費者や地域市民などとのつながりを保ちながら、様々な経済的な価値を産み出しています。企業は多くの人々に収入をもたらす雇用の場を提供するとともに、日々の生活に必要とする様々な製品やサービスなどを供給しています。このように、企業は人々の生活改善や発展を実現する上で、最も重要な役割を担っています。一方では、過労死や強制労働や児童労働や職場ハラスメントなどを考えますと、企業も「人権」を侵害する組織でもあります。最近、人権侵害の疑惑がある企業に対する市民社会の反対運動や国内外の法を通じた訴訟が増えているとともに、企業による人権責任への期待も高まっています。
 このようにして、自分と他人の「人権」を尊重し守るために、以下の点が必要です。
1)自分と他人の「人権」を知り、その本質を理解すること。
2)誰とどんな状況によって自分と他人の「人権」を保護するか、または侵害するかを見極めること。
「人権」の授業において、この知識と能力を深めることができます。