南山の先生

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研究所・社会倫理研究所

森山 花鈴

職名 准教授
専攻分野 行政学、公共政策学、政策過程論、自殺対策
主要著書・論文 『自殺対策の政治学』(単著、晃洋書房、2018年)
『よくわかる自殺対策―多分野連携と現場力で「いのち」を守る―』(共著、ぎょうせい、2015年)
“Mental healthcare efforts for the public after the Great East Japan Earthquake “Guide to Good Mental Health for Those Affected by Natural Disasters” published by the Cabinet Office. ”(共著、Brain and Development、2013年)
将来的研究分野 自殺の問題をはじめとする社会問題に関する政策学的研究
担当の授業科目 性と生命における人間の尊厳、生命と倫理問題、人権をめぐって

いのちと政治を考える

政治家や官僚、NPO法人(特定非営利活動法人)をはじめとする民間団体で活動する方々に、皆さんは、どのようなイメージを抱くでしょうか。

テレビなどで扱われる政治ニュースを見ても、「なんだか大変なことが起こっているようだけれど、政治は遠い」、「自分とは違う世界の人たちだ」と思っている人が多いのではないでしょうか。私は、これまで行政や民間団体の現場で働いてきたこともあり、「政治」や「政策」に直に触れる機会が多くあった方だと思うのですが、そこから感じるのは、政治家や官僚と、皆さんとの距離は、実はそんなに大きく開いているわけではない、ということです。政治は、自分たちの生活と密接につながっています。私も、高校生の頃は、「社会ではいろんなことが起きているようだけれど、自分はどうしたらよいのだろう?」とずっと考えてきたので、授業などでは、素朴な疑問から現場の声も含めて、皆さんにお伝えすることができればと考えています。

私は、福祉・医療関連の政策、なかでも自殺対策の政策に関心があり、様々な角度から研究を続けてきました。皆さんの中には、「自殺」というフレーズを聞いたとき、暗い話題だな、とか、自分には関係のないことだ、と思う方々も多いかもしれません。けれども、今の日本では、2022年の年間自殺者数が2万1881人(警察庁)、若者世代で死因の第1位が自殺となっています。このような状況の中で、日本では、2006年に自殺対策基本法が成立し、2007年には自殺総合対策大綱が定められ、国家として自殺予防・遺族支援の政策に取り組まれるようになりました。いまでこそさまざまな場所で「自殺」の問題が語られるようになってきましたが、この法律の制定前までは、自殺はあくまでも個人の問題として考えられる風潮が強く、「偏見」も多く存在しました。それでは、なぜ、それまで「個人の問題」として捉えられていたこの問題、いわば私的領域分野の問題が「政策」となり、国が扱うようになったのか、そしてどのように扱われていったのか。それが私の関心テーマのひとつです。

自分の身近にある問題に関心が出てきたとき、そもそも何が問題になっているのか、そしてその問題を解決するためには何が必要なのか、自分の頭で考えることは重要です。ただ、自分の言葉で意見を言えるようになるためには、マスメディア等でなされるいろんな情報を把握しつつもそれに流されず、きちんと学ぶことが必要になります。

これから先、日本では、限られた財源の中で、どういったテーマが「政策」として扱われていくことになるのでしょうか。今でも、日本だけでなく国際規模で社会問題となっている事象は溢れています。私自身、これらの社会問題に関して、誰かがこう言っていたからこうに違いない、と思うのではなくて、自分自身の物差しをもち、なおかつ研究者や関係者との連携も図りながら研究をしていけたらと考えています。