南山の先生

学部別インデックス

研究所・宗教文化研究所

FONGARO,Enrico

職名 教授
専攻分野 哲学・美学
主要著書・論文 (著書)
『東アジアにおける哲学の生成と発展―間文化の視点から』法政大学出版局(共著)2019年6月
『比較思想から見た日本仏教』山喜房佛書林(共著)2015年12月

(論文)
「危機の時代を「観る」―福島に於ける永遠の今の自己限定のロゴス」東西宗教研究 (22) 33-51 2024年9月
など
将来的研究分野 日本哲学・間文化哲学
担当の授業科目 哲学B、思想における人間の尊厳、宗教哲学演習

多文化の間で迷子にならないように、他文化と出会う

 私たちは今日インターネットに依存して生きていると言えます。このことを否定する人は誰もいないことでしょう。毎日が画像、動画、写真に埋もれ、何が真実で何が虚偽なのかさえも分からなくなってしまっています。この意味で、AIの時代は、何が現実なのかという昔からの問題を解決しました。それは、何も現実ではないということです。スマートフォンを開けば、すぐに解きほぐせない混沌に包まれます。何時間も、どこか知らない場所にいる人々が奇妙なことや面白いことをしている画像や動画を限りなく見続けることができます。時には理解できるような気もしますが、時には全く理解できません。不思議なことですが、あの多色の混乱の中で見られるものは全てはっきりしています。わけのわからない、鮮やかなカオスは、私たちが生きている世界そのものでしょう。

 この混沌に少し秩序を与えるにはどうすればよいのでしょうか。「多文化」の中で迷子になってしまわないためには、一つのまたはそれ以上の「他文化」と出会うことが必要ではないでしょうか。そのようにすると、落ち着いて、頭、手、体を使い、苦労しながらも、楽しみながら少しずつ混沌が整理されはじめるのです。他言語、他文化を知ることで、自分が誰なのか、何のために今、この複雑な世界で生きているのかを、より深く理解することができるようになるでしょう。最後に、このことと哲学は何の関係があるのでしょうか?哲学を「間文化的」な立場から捉えると、つながりが見えてきます。今日まで考えたことと違う考え方の間に自分を置くと、いろいろなことが見えてくるに違いありません。