南山の先生

学部別インデックス

理工学部・ソフトウェア工学科

佐伯 元司

職名 教授
専攻分野 ソフトウェア工学,特に要求工学,ソフトウェア設計
主要著書・論文 Detecting Bad Smells in Use Case Descriptions, RE2019, pp.98-108, 2019. (共著)
Applying Class Distance to Decide Similarity on Information Models for Automated Data Interoperability,IJSEKE, Vol. 31, No.3, pp.405-434, 2021. (共著)
将来的研究分野 ソフトウェアの進化機構の解明
担当の授業科目 ソフトウェア工学演習,理工学概論(ソフトウェア工学):分担

ソフトウェア開発は芸術家の仕事?

 現在の社会は情報で溢れ,情報を処理する設備,つまりコンピュータが24時間と言ってよいほど,皆さんの身近で稼働しています.皆さんが今持っているスマホやタブレットもこれらの設備の代表選手ですし,TOICAやSuicaなどのICカードで通る電車の改札,自宅へ帰ればテレビやクーラーなどの家電製品,自動車にもコンピュータが搭載されています.さて,コンピュータはいったい何で動いているのでしょう.電気はもちろんですが,コンピュータを動かしているものはソフトウェア(プログラム)です.これがないとコンピュータは単なる空箱になってしまいます.

 世界初のコンピュータ(プログラムによって動作するもの)は,1946年に米国でENIACと呼ばれる真空管を使ったものが開発され,なんと20トン以上もの大きさで,当時は軍事目的の計算に使用したとされています.1976年にNECが今でいうパソコンの原型を製品化しましたが,クロック2MHz,メモリ65KBでした.現在の普通のパソコンは,これと比べ1500倍(クロック),250000倍(メモリ)以上を誇り,最近2年連続で世界一位となった理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」などを見ればコンピュータ本体,いわゆるハードウェアは格段の進歩を遂げているのがわかるでしょう.

 では,ソフトウェアのほうはどうでしょうか.軍事プロジェクトでの数値計算プログラムから,現在ソフトウェアは日常生活いたるところで,様々な目的で稼働しており,その規模はハードウェアよりはるかに激しく,数百万倍以上に膨れ上がっています.このような巨大になってしまった複雑なソフトウェアは誰が作るのでしょうか.数人の優れた人間が作るのでしょうか.彼らはソフトウェア開発の芸術家で人間国宝に相当するのでしょうか.答えはNoです.1968年に「ソフトウェア工学」という新しい言葉で表される学問分野が提唱され,ソフトウェア開発を工学的にとらえ,生産性を向上させるための技術,学問体系が生まれてきました.皆さんがこれまで中学・高校で習ってきた物理,化学,生物などの理科は,自然界で起こることを相手にするため自然科学と呼ばれています.それに対し「ソフトウェア工学」は,人造物である「ソフトウェア」を相手にするため,これまでのアプローチではうまくできないこともたくさんあります.私の研究室では,普通の人でも高品質のソフトウェアを楽に作ることができる,夢のような技術の研究を行っています.研究対象は,広範囲にまたがっており,お客さんが欲しいと思っているソフトウェアへの要求を正確にとらえる技術,既存のソフトウェアをよりよいものへの進化させていく技術などを研究しています.


001.png