南山の先生

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理工学部・ソフトウェア工学科

金山 知俊

職名 講師
専攻分野 ソフトウェア工学、コンピュータグラフィックス
主要著書・論文 「分枝規則を再現し、光、ホルモンの影響を考慮した樹木の生長モデル」、
『電子情報通信学会論文誌』、1996年.
担当の授業科目 「理工学基礎演習」「プログラミング応用実習」他

自然の中にひそむ法則

ここ数年の3次元コンピュータグラフィックス(以下、CG)の技術向上は目覚しいものがあります。ハリウッドの映画ではCGを使った映像があたりまえのように用いられ、すでに素人には実写と区別がつかないレベルまで到達しています。また、ハードウェアも大幅な進化を遂げ、数年前には何千万円もするCG専用のコンピュータでなければ不可能だった映像が数万円の身近なゲーム機でも得られるようになってきました。

このようにCGの表示技術はどんどん身近になっていますが、CGの素材となる物体のデータ作成においては未だ人手による地道な作業が主となっています。たとえば、人物が歩くシーンをCGで作成するためには、まず人物の形状データが必要となり、さらにその形状データが歩いているように見えるように変形、移動させなければなりません。

人間のデータ作成に関しては需要も多く、様々な研究の成果が存在するため比較的完成された分野といえるでしょう。しかし、現実感のある情景をCGで表現するためには人間だけでは不足で、現実に存在する様々な事物のデータが必要です。特に自然の事物は形状が複雑で個体差も大きいため、手作業でこれらを作成するのは困難です。そのため、自然の事物を効率的に作り出すことが求められています。

私は植物、とくに樹木の形状データをコンピュータで生成する研究をしていますが、その過程で樹木の生長には様々な法則が存在することを知りました。例えば樹木一般の法則としては、葉は必ず決まった方向に枝から生える、幹や枝から新しい枝が分岐するときは必ず葉もしくは葉があった位置から分岐する等があり、樹種固有の法則としては、サクラでは花芽は短い枝につき、長く伸びた枝につく芽は大部分が枝になり、花芽はつきにくつきにくい等があります。

これらの法則をモデルにまとめ、樹木の形状データを作成するのですが、これだけでは現実感のある樹木は作れません。さらにリアルな樹木を得るためには、重力、水、栄養分などの周囲の環境をとりいれたモデルが必要です。このように、身近に存在する樹木ひとつをとっても、それを再現するには様々な要因を考慮する必要があるのです。

樹木のみならず、世の中に存在する様々な事物には何らかの法則が存在します。普段は見過ごしているそれらの法則を見つけるには好奇心や注意力が必要です。現代は情報化社会といわれる時代で様々な情報があふれていますが、学問を志す皆さんにはそれらを漫然と受け取るのではなく、情報を分析し、自分なりに考え、まとめる力をつけてほしいと考えています。