南山の先生

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理工学部・ソフトウェア工学科

沢田 篤史

職名 教授
専攻分野 ソフトウェア工学
主要著書・論文 (1)ソフトウェアアーキテクチャの設計と文書化の技術、共著、コンピュータソフトウェア、Vol. 32, No. 1, pp. 35-46, 2015.
(2)組込みソフトウェア開発技術、共編著、CQ出版社、2011.
将来的研究分野 ソフトウェア開発支援、組込みソフトウェア工学、プロダクトラインソフトウェア工学
担当の授業科目 「ソフトウェア開発技術 I・II」、「ソフトウェア工学応用」、「正当性検証と妥当性確認」

実世界に組み込まれたコンピュータのソフトウェアをいかに作るか?

私の研究は、「組込みシステム」のソフトウェアをいかに便利にするか、それらをいかに効率良く作るか、またそれらをいかに安全かつ信頼できるものにするか、という技術に関するものです。

コンピュータは我々の周囲の至るところに様々な形で存在し、今や日常生活に不可欠なものとなっています。我々は、何気ない生活の中で、気づかぬうちにコンピュータを使い、常にその恩恵にあずかっています。コンピュータが内蔵され、コンピュータに制御される製品のことを組込みシステムと呼びますが、そういった製品が普及するにつれ、我々の暮らしている世界全体にコンピュータが組み込まれるようになってきていると言えます。

これら組込みシステムのほとんどはソフトウェアによって制御されています。より多くのコンピュータが環境に組み込まれ、いろいろな目的に利用されるようになるにつれ、組込みシステムの指令塔であるソフトウェアの役割や責任はますます重大になりますが、これら組込みシステムのソフトウェアを作ることは、システム自身の便利さからは想像もつかないほど面倒で、考えなければならない点が多い作業です。

第一に、組込みシステムのソフトウェアは信頼に足るものでなければなりません。普段の生活の場面で、必要な時に使うことができ、しかも期待される処理を正しく実行できなければなりません。また、人間や環境に危害を及ぼすようなことがあってはなりません。さらに、ネットワークに接続されたシステムでは、守るべき情報をしっかりと守る、情報セキュリティの観点も重要となります。

第二に、組込みシステムのソフトウェアは効率良く動作するものでなくてはなりません。効率を良くするといっても、単に処理のスピードを向上させれば良いというものではありません。限られた計算能力やメモリ容量で必要となる処理を行ったり、消費電力を抑えるといったことも考えなければなりません。

第三に、組込みシステムのソフトウェアは使いやすいものであるべきです。組込みシステムの利用者は多様で、誰がどんな使い方をするかわかりません。様々な人が特別な訓練なしに使えるように、適切なガイダンスの提供や誤った操作に対してシステムが破綻しないような配慮が必要です。また、さらに進んだ機能として、利用者の嗜好や位置、時間、操作履歴、習熟度など、様々な情報からシステムが行うべき処理を適切に判断することも求められます。

第四は、組込みシステムに限ったことではありませんが、ソフトウェアは変更を受けることを前提に作られなければなりません。時代の流行、市場の要求、新しい技術の登場などに伴い、組込みシステムへの要求や期待は常に変化しています。システムがこれらの変化へ柔軟に対応するためには、ソフトウェアの変更が必要不可欠です。したがって、ソフトウェアは変更しやすいように、また変更の管理がしやすいように作られていなければなりません。

私は、このように多くのことを考えなければならない組込みソフトウェアの開発を支援する技術の研究をしています。具体的には、家庭で利用されるネットワーク家電を題材に、家電が互いに協力しあいながら利用者に便利なサービスを提供するための協調基盤、便利なサービスを容易に作成することのできるサービス開発支援システムなどを通じ、実世界に組み込まれたコンピュータシステムのソフトウェアをいかに作るかを研究しています。