南山の先生

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理工学部・機械システム工学科

稲垣  伸吉

職名 教授
専攻分野 ・ロボット工学
・自律分散システム
・エネルギー管理システム
主要著書・論文 ・接地点追従による多脚移動ロボットの歩行制御~古くて新しい分散歩行制御~、計測と制御、55巻4号、pp. 265-271、2015年(単著)
・接地点追従法と6脚移動ロボット、ロボット学会誌、37巻2号、pp. 156-159、2019年(共著)
・Design and Analysis of Distributed Energy Management Systems Integration of EMS, EV, and ICT, Springer, 2020(共著)
将来的研究分野 ・新しい移動機構としての多脚移動の発展
・移動と電力の統合的管理による新しい街づくり

多脚移動ロボットがおもしろい

 皆さんはロボットは好きですか?私も大好きで、子供の頃からアニメや映画に出てくるロボットを見ては、いつか自分でロボットを作りたいと思っていました。もちろん主人公の格好良いロボットも好きでしたが、それより興味を持ったのは格好良いとは言いがたい、敵のやられ役のロボットでした。そのようなやられ役は毎回、主人公機をいかにやっつけるか(苦しめるか)の工夫がされていて、その合理性とアイデアが面白かったのです。それが高じてか、今では多脚移動ロボットという、あまり格好良くないロボット(格好良いと思う人もいるかも)の研究をしています。多脚移動ロボットとは4本以上の脚を持つロボットのことをいい、私は特に6本以上の昆虫型、クモ型、ムカデ型といったロボットを研究しています。このような多くの脚を持つロボットは転びにくい、複雑な地形を移動できる、重いものを運べる、脚の1本や2本を失っても移動できるといった利点があります。進化の長い歴史の中で多脚の生物がまだまだ多く残っていることから、多くの脚を持つことは地上で移動する、生き残るという意味で合理的であるのかもしれません。では多脚移動ロボットの研究の面白さを3点紹介したいと思います。

 まず、その歩く仕組みが謎であることです。人間は2脚、這いつくばれば4脚で歩くことができます。その際、どの脚(もしくは腕)をどの順番で動かすかは本能的に分かります。では自分が6脚になったとして、どの順番で動かせば良いか想像できるでしょうか?8脚なら?10脚なら?さらにムカデみたいなら?あの小さい虫たちは小さい脳にもかかわらず、多くの脚を整然と動かし様々な環境を移動できます。きっと多くの脚を動かすうまい仕組みがあるに違いありません。実は100年以上の昔から生物のその仕組みが研究されてきました。しかし、生物のような巧みな歩行を再現することはロボットではまだ実現されていません。多脚を動かすうまい仕組みを見つけられれば、地球で繁栄する多脚の生物たちのように、様々な環境を移動できる様々なロボットを実現することができます。

 次に、様々な最新技術を多脚移動ロボットに活用できる点です。例えば、手のひらサイズのコンピュータが10年前のパソコンを超える性能を持っています。これを頭脳としてロボットに使うことができます。また、3Dプリンタによりこれまでに作れなかった脚などを一晩で作ることができます。対象物に照射したレーザ光線が反射して返ってくるまでの時間を計測(!)して、距離を測ることができるセンサは、地形や障害物を見るための目として使えるようになっています。日々進歩するこれらの技術により多脚移動ロボットを進化させることができます。いつか生物を超える性能を持つロボットも実現出来るかもしれません。

 そして、多脚移動の未来の移動機構としての可能性です。現在普及している移動機構である車は、人やものを効率良く運ぶのに優れています。しかし、車では移動することができない環境は数多くあります。時にそれは災害地であるかもしれません。もし足場を選ばず移動できる移動機構があれば多くの人を助けられると思いませんか?多脚移動はその可能性を秘めているのです。

 最後に私が研究している多脚移動ロボットを図1、2に紹介します。実は、これらのロボットは多少の差はあれ同じ歩行の仕組みで動いています。詳しく知りたい方は、上記の「主要著書・論文」を調べてみて下さい。面白いですよ。あまり格好良くないロボットが好きな人は一緒に研究しませんか?



図1: 6脚ロボット実機の障害物踏破 


Fig2_Inagaki_vrep_stairs_color.png
図2: ムカデ型ロボットのシミュレーション