南山の先生

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理工学部・電子情報工学科

宇田 智紀

職名 准教授
専攻分野 応用数学
主要著書・論文 Fast and accurate computation of ellipse tangency time for anisotropic persistent
homology, T. Uda(単著), JSIAM Letters, 2026. DOI: 10.14495/jsiaml.18.13
Identification of Atmospheric Blocking with Morphological Type by Topological Flow Data Analysis, T. Uda, et al.(共著), JMSJ, 2021. DOI: 10.2151/jmsj.2021-057
パーシステントホモロジーとレーブグラフを用いた2次元ハミルトンベクトル場の流線位相構造の自動抽出アルゴリズム,宇田 智紀, et al.(共著), 日本応用数理学会論文誌,2019. DOI: 10.11540/jsiamt.29.2_187
将来的研究分野 数理データ科学・幾何学的データ解析
AI駆動による検証の自動化と数理科学研究への応用
担当の授業科目 微積分学
線形代数学

AI 時代を支える応用数学と数理データ科学

近年,ChatGPT をはじめとする生成 AI が急速に発展し,私たちの生活や研究のあり方も大きく変わりつつあります.また,科学と技術の発展によって,社会には膨大で複雑なデータがあふれています.しかし,AI は必ずしも常に正しい答えを返すわけではなく,大量のデータから本当に重要な特徴を見つけ出すことは実はそう簡単ではありません.そこで重要になるのが,データや AI を数学によって理解し,検証するための研究です.

 私は,応用数学や数理データ科学の立場から,「データの構造を数学的に理解する研究」と,「AI を信頼できる形で活用するための研究」に取り組んでいます.特に興味を持っているのは,データの「形」に注目する数学です.例えば,気象観測データのような複雑なデータには,単純な平均やグラフだけでは見えない構造が隠れていることがあります.データの構造を調べる方法の一つとして,位相幾何学という数学分野の考え方を応用した「トポロジカルデータ解析(Topological Data Analysis, TDA)」が研究されています.これは,データの中に現れる「輪っかや空洞」のようなカタチの特徴に注目する解析手法です(図参照).ノイズの多いデータからも比較的安定に特徴を取り出せることが数学的に証明されており,気象・材料・医療画像解析など,さまざまな分野への応用が期待されています.

点群の「輪っかのカタチ」を捉える位相的データ解析手法.png

図.  点群の「輪っかのカタチ」を捉える位相的データ解析手法

近年,AI を科学研究に利用する試みも急速に進んでいます.AI は大量のデータを高速に処理したり,人間が気づきにくいパターンを発見したりできる一方で,誤った結果をもっともらしく出力してしまうこともあります.そのため,科学研究で AI を利用するためには,「AI が本当に正しい条件を満たしているか」を厳密に検証することが重要になります.私は,AI に科学技術計算やデータ解析のプログラム生成を支援させつつ,その結果を数学的に確認し,安全かつ信頼できる形で活用するための研究にも興味を持っています.数学は厳密な学問です.だからこそ,数学はAIの不確かさを補う羅針盤になる可能性を秘めているはずです.これは将来の科学研究を支える新しい基盤技術につながる可能性があります.AI にすべてを任せるのではなく,数学によって AI を支え,またAIによって科学を,そして社会を支える.これからの時代の新しいAIとのつき合い方に,数学者の視点で正面から取り組んでいきたいと考えています.

数学というと,受験科目での「抽象的な計算の学問」のイメージを持つ人も多いかもしれません.しかし実際には,数学は抽象的であるからこそ,様々な現象を整理し,記述することができます.捉えどころのなさそうな複雑で高次元のデータからすら構造を発見できるポテンシャルを秘めた学問なのです.AI やデータ科学がますます重要になるこれからの時代において,数学はこれからも社会や科学技術を支える重要な役割を果たしていくと考えています.