南山の先生

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理工学部・電子情報工学科

宮澤 元

職名 准教授
専攻分野 情報科学
主要著書・論文 広域分散ファイルシステムにおける二次サーバの有効性と限界 (共著)
将来的研究分野 エッジコンピューティングプラットフォーム
担当の授業科目 ネットワークプログラミング(2年次Q3)
PBL実践演習(電子情報工学) (3年次 Q2)
クラウド基盤と仮想化技術 (3年次 Q3)

雲をつくる話

「雲」と言っても空に浮かぶ雲ではありません。クラウドコンピューティング(Cloud Computing)と呼ばれるコンピュータの利用方法のことです。「クラウド」という用語は,大手テック企業が自社のスマートフォン(スマホ)のバックアップなどのために提供しているサービス名にも用いられているので,聞いたことがある方もいるでしょう。このサービスの用途から,クラウドとはネット上でのデータの保存に用いるもの,と考えている人も多いと思います。もちろん,データ保存もクラウドで実現できることの一つですが,クラウドとはデータの保存だけに使われるものではありません。

利用者がクラウドを利用していると明確に意識していなくても,クラウドを利用することを前提とした様々な製品が身近にあふれています。例えば,スマホでSNSを利用したり,スマートスピーカのような IoT 機器を利用したりする場合にもクラウドが使われています。クラウドでは単にデータを保存するだけではなく,SNS メッセージの配信を行ったり,スマートスピーカの音声情報の処理を行ったりしているわけです。このように,目の前にある機器ではなく,はっきりとは見えないがネットワーク上のどこかにぼんやり存在している機器の全体を雲に見立てて,これに何らかの処理を行わせることからクラウド=雲と呼ばれているのです。

クラウドが登場する以前から,利用者がコンピュータネットワークを介して接続されたサーバと呼ばれるコンピュータに様々な処理を行わせるクライアント・サーバ方式という分散処理の仕組みが存在していました。何かに処理を行わせるという観点からは,クラウドを使う場合でも,クラウドをサーバとしてクライアント・サーバ方式で処理を行わせることに変わりはありません。それでは,クラウドの何が特別なのでしょうか。

クラウドの特徴は,様々なサービスを柔軟に提供できる点にあります。従来のサーバと同様のサービスを提供することもできますし,「サービスを提供する能力」をサービスとして提供するようなことも可能です。そのため,自分でサービスを提供したい利用者は,クラウドを利用することで,自分でサーバを用意する場合と比べて,素早く簡単に安価にサービスを提供できます。クラウドが提供する処理能力も利用者の必要に応じて柔軟に変更できるので,利用したい時に利用したい分だけ必要に応じてサービスを利用でき,利用しない時には利用料がかかりません。そのため,サービス利用量が大きく変動するような場合には特に便利です。

一方クラウドを提供する側は,データセンタと呼ばれる施設に用意した多数のコンピュータを使って並列処理を行うことで,非常に多数の利用者にサービスを提供しています。多数のコンピュータを用意すると言っても,利用者1人に対して1台のコンピュータを用意できる訳ではありません。そこでクラウドを実現する上では,1台のコンピュータを何台にも見せかけるような仮想化技術や,利用者の処理要求を処理能力に余裕があるコンピュータに担当させるようなスケジューリング技術が重要になってきます。

私が担当する専門科目では,ソケットというコンピュータネットワークにおける基本的なデータ通信技術を始め,コンピュータネットワーク上を流れるデータを確認する技術や,IoT技術の基礎などについて,実際のプログラミングを通じて学ぶほか,クラウドを実現するための具体的な技術についても学びます。クラウドのような実用的で大規模なネットワーク技術について,基礎から応用までしっかり身につけてもらえるものと期待しています。