南山の先生

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理工学部・電子情報工学科

藤井 勝之

職名 教授
専攻分野 電気電子工学,電磁波工学
主要著書・論文 Antennas and Propagation for Body-centric Wireless Communications, Artech House, 2006.(4章分担執筆)
Stabilization of phantom fabrication by degassing using ultrasonic vibrations, IEICE Communications Express, vol.11, no.5, pp.229-233, May 2022. (共著)
2.4GHz帯ウェアラブル二次元通信シートのヌル点簡易位置推定, 電子情報通信学会論文誌B, vol.J104-B, no.9, pp.727-740, Sep. 2021. (共著)
Local Specific Absorption Rate Reduction Method for 1.2-GHz Band Handheld Transceiver with a Reflector, IEICE Communications Express, vol.10, no.1, pp.36-41, Jan. 2021. (共著)
Electric field distributions of wearable devices using the human body as a transmission channel, IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol.55, no.7, pp.2080-2087, July 2007. (共著)
将来的研究分野 電磁波と生体の相互作用評価
担当の授業科目 ワイヤレスシステム工学,幾何とベクトル,科学技術英語,電子工学研究

ウェアラブルコンピュータでいつでもどこでも誰とでも

僕は人体近傍でウェアラブルコンピュータをネットワーク化し,いつでもどこでも情報をやりとりできるWireless Body Area Network(WBAN)の研究をしています.Wirelessなので通信には電波を用います.そして電波は波ですから,それを表す物理量のひとつに周波数というものがあります.これは一秒間に波の向きが変わる回数を表し,単位はHz(ヘルツ)といいます.皆さんもご存知のように,家庭用コンセントは東日本50Hz,西日本60Hzですね.これが携帯電話だと2GHz(一秒間に20億回も変化する)の電波が使われています.コンセントに指を突っ込むと(よい子はまねしないで下さい)ビリビリ感電しますね.低い周波数だと人体は刺激として感じます.もっと周波数が高くなって,例えば電子レンジなどに使われている2.45GHzになると,生体への影響は熱的な作用が支配的になります.だから電子レンジで物が温められるのです.さらに周波数が高くなると電波が目にみえるようになります(可視光の領域).もっと高くなると紫外線など日焼けの原因になります.そしてもっともっと周波数が高くなると,放射線などのように人体の遺伝子を傷つける作用があります.

さて,WBANを構築するには,人体近傍で電磁波がどのような振る舞いをするのか知っていなくてはなりません.人体モデルを使ってシミュレーションしたところ,人体に電気を流すと「オーラ」のように電波が人体の周りに発生することがわかりました.あと,「ファントム」という人体と等しい物質を薬品を調合して作製し,伝送実験もしています.(もし興味を持たれたら南山大学の入試広報を通じて,是非お気軽に見学にいらして下さいね)

僕がなぜ電波に興味を持ったかというと,学生時代に研究室に配属になって,「電池の要らないラジオ(鉱石ラジオ)」の作り方を先生から教えてもらい,電波のエネルギーだけでラジオが聴けることに感動したからです.ラジオを作ることにより,コイルがファラデーの電磁誘導の法則によって,磁束の時間変化に比例して逆起電力が発生することを身をもって実感しました.原理は高校レベルの物理学で十分です.高校生の皆さんに南山の授業を体験して頂ける,「オープンキャンパス模擬授業」というのが毎年開催されます.2006年は僕が「電池の要らないラジオ作り」の実習をしました.僕の授業を受けた生徒さん達のアンケートに,「高校レベルの知識が実際の生活に役立っていることに感動しました!」,「わかりやすい授業でよかった!」と書いてくれたのを見たときは,先生になって本当によかったなぁと思いました.僕が南山大学にいることで,少しでも多くの人に,科学に興味を持ってもらえるならば,この上ない喜びです.ひたすら思考に耽ることは学問では非常に大事ですが,僕はまず実験を通して物理現象を皆さんに体感してほしいのです.そして,興味を持った後から,その理論を自ら追求すればいいのではないでしょうか.科学における新しい発見は,常に実験によって検証されるのですから.

南山大学 理工学部 電子情報工学科で,僕は「モノづくり」について講義をしています.実習を通して,実験結果が理論と合った時の感動を大事にして頂きたいと思っています.世界に誇れる日本の「モノづくり」に貢献できる人材を育成するため,尽力させて頂きます.それでは,ぜひ皆さんとキャンパスでお会いできることを楽しみにしております!