南山の先生

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理工学部・電子情報工学科

石原 靖哲

職名 教授
専攻分野 情報科学
主要著書・論文 ・XPath充足可能性を判定する多項式時間アルゴリズムの提案と評価, 情報処理学会論文誌, Vol.57, No.5, pp.1477-1488, 2016. (共著)
・The Consistency and Absolute Consistency Problems of XML Schema Mappings between Restricted DTDs, World Wide Web Journal, Vol.18, Issue 5, pp.1443-1461, 2015. (共著)
・A Secrecy Criterion for Outsourcing Encrypted Databases Based on Inference Analysis, IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E98-D, No.6, pp.1161-1165, 2015. (共著)
将来的研究分野 データベース理論、情報セキュリティ
担当の授業科目 情報通信セキュリティ

情報の表現を究めたい

情報には形がありません。形がないものをやり取りし、処理するためには、その表現が必要です。情報科学とは、情報をどう表現するかを追究する学問だといっても過言ではないでしょう。

たとえば、情報圧縮は情報をできるだけコンパクトに表現するための技術です。暗号は他人に見られても中身がわからないように、かつ当事者は正確に中身を復元できるように情報を表現するための技術です。「データ処理や計算の手順」を「情報」とみなせば、そのような手順をコンピュータがわかるように表現することはすなわちプログラミングということになります。

情報の表現は、その情報の処理・管理の可否や効率、安全性などに大きく影響します。たとえば、情報を圧縮すると、その情報のやり取りが短時間ですむようになります。しかし、古典的な情報圧縮方式では、圧縮ずみの情報に対しては展開以外の処理はほとんどなにもできませんでした。暗号についても似たようなことが言えます。そのため、最近では、いくらかの処理が可能となるような圧縮方式や暗号方式が研究されています。下手に書かれたプログラムを実行したなら、結果が出力されるまでにひどく時間がかかることでしょう。バージョンアップのためのプログラムの改変も、おそろしく手間がかかるものになるでしょう。そもそも、所望の手順を正確にプログラムとして表現すること自体がとても難しい問題です。

情報の表現をコンピュータに決めさせる場合もあります。近年話題の、いわゆる人工知能による囲碁や将棋などは、その好例でしょう。表現したい情報は、「与えられた盤面に対して、先手と後手のどちらがどれくらい有利かを与える関数」です。この関数さえ手に入れば、誰でもベストの手を指し続けることができますよね。かつては人間がこの関数をできるだけ正確に表現しようと努力し、プログラムとしてコンピュータに与えていましたが、その強さには限界がありました。一方で、人工知能による囲碁や将棋では、膨大な量の棋譜をもとにして、コンピュータにその関数の表現を構築させます。その結果、世界の一流棋士を破るほどの強さをもつに至りました。

情報を適切に表現するということは、とても大事なことなのです。

さて、情報科学にはデータベースという分野があります。データベースとは、世の中に存在している事実の一部を切り取ってうまく表現し、コンピュータの中に収めたシステムのことです。ところが、この「世の中に存在している事実」というのはかなりの曲者で、さまざまな事物が複雑に絡み合っていたり、部分的に不明なものが混ざっていたりします。データベース分野では、どんな種類の情報をどのように表現したら各種処理の効率がどれくらいよくなるかという研究成果が次々と発表されています。情報科学の目標に真正面から取り組んでいる分野のひとつと言えるでしょう。

コンピュータがあらゆるものに埋め込まれ、それらの間で情報がやりとりされる時代になってきました。それらの情報をどう表現するかは、大げさに言えば、これからの世の中がうまく回っていくかどうかに関わります。情報の表現はただ一つではありません。その場面や目的、その時代に応じた適切な表現を生み出し選択していくような研究を目指しています。