南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

秦 涼太

職名 講師
専攻分野 スマートシティ、ソーシャルデータサイエンス
主要著書・論文 秦涼太, 岡田幸彦, & 山本亨輔. (2022). 移動センシングを用いたシステム同定における
パラメータ推定精度の数値的検討. 構造工学論文集 A, 68, 298-309(共著).
Shin, R., Okada, Y., & Yamamoto, K. (2022). Application of C-LSTM networks to
automatic labeling of vehicle dynamic response data for bridges. Sensors, 22(9),
3486(共著).
Motai, R., Mashiko, S., Kawamata, Y., Shin, R., & Okada, Y. (2025).
Generating Synthetic Journal‐Entry Data Using Variational Autoencoder.
Intelligent Systems in Accounting, Finance and Management, 32(1), e70005(共著).
将来的研究分野 移動体センシングとAIで橋や道路などのインフラの状態を捉え、補修や点検といった
政策の効果を因果推論で評価し、限られた財源のもとで自治体が補修の優先順位を
説明可能に決められるよう支援する、データ駆動型の社会インフラ政策研究
担当の授業科目 社会システムと環境、人間と機械、数学、データサイエンス、統計学

データとAIで考える、これからのインフラ政策

 高校生の皆さんは、毎日の通学で、橋を渡り、トンネルを抜け、舗装された道路を歩いているはずです。普段は気にも留めないと思いますが、日本には、道路橋がおよそ73万基あります。その多くは高度経済成長期、半世紀以上も前に、一斉に造られました。橋が傷むのは、ただ年月が過ぎたからではありません。毎日その上を通る大型車などの重い荷重、染み込む雨水や塩分、暑さ寒さの繰り返しといった負担が、長い年月をかけて積み重なっていくからです。ですから、同じ年に造られた橋でも、どれだけの交通を支え、どんな環境に置かれてきたかで、傷み方はまるで違います。

 ところが、それらをすべて新しく架け替えるお金も、隅々まで点検する人手も、もう十分にはありません。人口は減り、自治体の財政は厳しくなる一方だからです。だとすれば、私たちは選ばなければなりません。どの橋を、いつ、どのように直すのか。場合によっては、思い切って通行を止めたり、近くの別の道に役割を譲ったりするのか。これは単なる工事の話ではなく、限られたお金と人手を社会全体のためにどう使うかという、「公共政策」の問題です。私が総合政策学部で取り組んでいるのは、まさにこの問いです。

 では、どうやって決めればよいのでしょうか。古さを見ただけでは、どの橋が危ないのかはわかりません。出発点は、一つ一つのインフラの「今の状態」を確かめることです。私はこれまで、橋を通行止めにして専門家が調べる代わりに、普段その橋を走る路線バスや乗用車の「揺れ」から、橋の健康状態を読み取る研究を続けてきました。走る車そのものを、街を動き回るセンサーにするのです。とはいえ、車から集まるデータは雑音だらけで、欠けた部分もたくさんあります。そこで力を発揮するのが、AIやデータサイエンスです。これらは、乱れたデータからでも橋の状態を推定し、次にどこを測るべきかまで提案してくれます。全国を走る無数のバスや車が、そのまま橋の「健康診断」をして回れば、人手が足りなくても社会全体でインフラを見守り続けられます。

 けれども、状態がわかっただけでは、政策は決まりません。大事なのは、その先の問いです。たとえば、「あの補修で、事故の危険は本当に下がったのか」「この通行止めは、どの地域の暮らしを不便にしたのか」。原因と結果を慎重に見分けるこうした考え方を、因果推論といいます。政策とは、突き詰めれば「何かをすれば、何が変わるのか」を問う営みだからです。さらに、橋や道路の値打ちは、コンクリートや鋼材そのものではありません。安全に通学でき、救急車が通れ、災害のときにも町が孤立しない。そうした暮らしの安心こそが、インフラの本当の価値です。その安心がどう変わるかを測り、最後は「あと何年もつのか」「いくらかかるのか」という予算や会計の言葉に翻訳して、住民や議会に説明できる形にする。そうして初めて、政策は動き出します。

 データサイエンス、AI、経済学、会計学、そして人と社会への理解を、ばらばらに学ぶのではなく、たった一つの問いのために組み合わせていくところに、総合政策学という学問の面白さがあります。皆さんが暮らす町にも、補修の順番を待っている橋や道路がきっとあるはずです。そうした身近な問題を、データを手がかりに解きほぐしていく学び方が、大学にはあります。老いていく社会のインフラを、誰もが納得できる形で支え続けたい。その仕組みを、皆さんと一緒に考えていける日を、楽しみにしています。