南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

野口 博史

職名 准教授
専攻分野

比較政治学、国際政治学

主要著書・論文

「環境変動と適応」『国際学論集』、「中国インドシナ同盟と第三次インドシナ戦争」『国際学論集』、「ポル・ポト政権の連繋政治」『国際学論集』

将来的研究分野

「政治体系論」「政治組織の環境適応」

担当の授業科目

「政治行動論」「政治学概論」「アジア政治論」「総合政策文献購読1(英語)」

21世紀の世界と政治学

19世紀から20世紀にかけて、世界の人口と第一次エネルギー使用量は急激に増加し続けました。この双方が組み合わさった結果、人間の移動と世界に関する情報の量も同様の傾向を持って増加してきています。

これを背景として、20世紀の政治史は強力で人的・物質的資源を有効に制御する国家間の争いや競争、そして国家に対する反乱が頻発し、「戦争と革命の世紀」と呼ばれ得る20世紀の後半には、国際連合成立当初50足らずであった主権国家の数が200近くまで増加しました。新興国家の多くは主として既存の国家政治体系の分裂によって生まれ、その誕生と成長の過程において暴力や膨大な流血を伴ってきたのです。

現代科学や医学は先進国民衆の生活水準の向上や寿命の延長に大きく寄与しましたが、国際的・国内的な政治秩序に寄与すべき政治学の発展は遅れてきました。

政治体系論を中心として発展した現代政治学等は1970年代に入って、ようやく国内紛争と戦争の関連や政治変動と暴力の関連といった長期的傾向に着目し始めましたが、依然として水準の異なる国内・国際体系間の複合的な緊張関係の緩和方法に関する共通の見解を持つには至っていません。

私は政治体系の外部環境への適応、という点に着目しつつ20世紀後半のアジアで「悲劇」の焦点となったカンボジアのポル・ポト政権やベトナム戦争を研究してきました。これらの研究はまだ完成したわけではありませんが、外部環境に対する認知や評価の偏りはこれら悲劇の主要な原因といっても良いのではないかと考えています。別の見方をすれば、これらの事件は悲劇ではなく避け得る人災であったのです。

21世紀に入って、世界は戦争や虐殺といった大問題の制御能力を増しつつあるのですが、依然として人権や経済、環境といった両立し難い難問を解決しなければなりません。人類の知的累積が現実の問題を解決できるかどうかの競争が続くでしょう。しかし、近年の技術発展によって個人が現在までに集積された膨大なデータを短時間で解析することが可能となってきていますし、若い研究者がこうした問題の解決方法を見つけ出すことは以前よりはるかに容易になってきています。さまざまな人々と交流することで問題の鍵を見つけて行きたいと思っています。