南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

平岩 俊司

職名 教授
専攻分野 現代東アジア研究、現代朝鮮論
主要著書・論文 『北朝鮮はいま、何を考えているのか』(単著、NHK出版新書、2017年)、『独裁国家・北朝鮮の実像-核・ミサイル・金正恩体制』(共著、朝日新聞出版、2017年)、『北朝鮮は何を考えているのか』(単著、NHK出版、2013年)、『北朝鮮-変貌を続ける独裁国家』(単著、中公新書、2013年)、『朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国-「唇歯の関係」の構造と変容-』(単著、世織書房、2010年)
将来的研究分野 東アジア国際関係、朝鮮半島を巡る国際関係、中国・朝鮮半島関係、日本・朝鮮半島関係
担当の授業科目 「対外政策論」「地域研究論」「総合政策プロジェクト研究」「グローバルガバナンス研究」(大学院)

朝鮮半島を巡る国際関係

日本に隣接し、米国、中国、ロシア(旧ソ連)という超大国が密接に関わる朝鮮半島、その朝鮮半島をめぐる国際関係が私の研究対象です。朝鮮半島は1910年から日本の植民地統治下におかれ、第二次世界大戦の後、植民地統治から解放されたにもかかわらず東西冷戦の影響もあって即時独立はかないませんでした。その後紆余曲折を経て朝鮮半島には韓国と北朝鮮の二つの政権が誕生することとなり分断国家とならざるをえませんでした。日本にとって朝鮮半島の動向は、隣接する地域であるのみならず、大国の利益が交錯するより広い国際関係の文脈からも重要な意味があります。

韓国は、冷戦期には日本と同じ西側陣営に属し、安全保障、経済などの観点から関係強化が進められ、1965年に国交正常化しました。しかし、歴史問題など複雑で微妙な問題が内包され、現在でも複雑で難しい状況が続いています。一方、北朝鮮とは国交がありませんが、日本人が拉致される事件が発生するなど、日本としては許容できず絶対に解決しなければならない問題となりました。また、北朝鮮が核ミサイルの開発を進めることは日本にとって直接的な脅威でもあります。こうした状況下、2002年に小泉総理(当時)が日本の総理大臣としてはじめて北朝鮮を訪問し、北朝鮮の最高指導者である金正日国防委員長(当時)と日朝平壌宣言を取り交わし、拉致問題、核ミサイル問題が解決した後に国交正常化することを約束しました。しかし、その後も日本の思うような展開を見せず北朝鮮との関係は余談の許さない状況が続いています。

いずれにせよ朝鮮半島でいったい何が起きているのかを冷静に分析しなければならないのですが、とくに北朝鮮からの直接的で正確な情報が少ないため北朝鮮の動向は不透明で予測が難しいというのが実状です。それゆえ、分断国家の一方である韓国、さらには中国、米国、ロシアからの情報、分析が重要になります。分断国家の当事者である韓国は北朝鮮についての情報収集、分析にどの国よりも力を入れています。ただ、当事者であるが故に自らに有利な状況を作ろうと操作的に情報を発信する場合があるので注意が必要です。また、北朝鮮の後ろ盾となっている中国は、同じ社会主義陣営に属し、歴史的にも北朝鮮と緊密な関係があるため、その情報、分析はきわめて重要になります。しかし、やはり中国も対米関係、対日関係、対韓関係を意識して操作的に情報を発信する場合があるので注意が必要です。一方、北朝鮮は、朝鮮戦争に国連軍として参戦した米国が北朝鮮を敵視していることが朝鮮半島問題の「核心」だとして米国との関係正常化を求めています。核ミサイル問題で紛糾する北朝鮮問題についての米国の役割はきわめて大きなものと言わざるを得ません。さらに北朝鮮政権の誕生で中心的な役割を果たしたロシアは、朝鮮半島を大国間関係の舞台として見ていますし同時に北朝鮮情勢の展開次第では経済的チャンスとの立場で、状況を見ながら朝鮮半島情勢に関わろうとしています。

このような大国の思惑が複雑に交錯する朝鮮半島に隣接する日本はどのように朝鮮半島と向き合わなければならないのでしょうか。言うまでも無く朝鮮半島情勢が日本にとって望ましい方向に展開してもらわなければならないのですが、そうするために日本は自らの役割と影響力を冷戦に分析した上で、韓国、北朝鮮、さらには関係国にどのように働きかけていかなければならないのか、総合政策学部で朝鮮半島情勢を考えるということはそういうことだろうと思っています。

中朝国境の白頭山(中国名長白山)頂上の天池(本人撮影)
中国側図們市側から臨む中朝国境(本人撮影)