南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

佐藤 創

職名 教授
専攻分野 開発経済学、国際経済論、国際開発論
主要著書・論文 『試される正義の秤:南アジアの開発と司法』(単著、名古屋大学出版会、2020年)、Varieties and Alternatives of Catching-up(共編著、Palgrave-Macmillan、2016年)。
将来的研究分野 開発途上国の経済発展における制度・産業変化のメカニズムについて
担当の授業科目 「国際貿易論」、「国際金融論」、「国際開発論」、「グローバル・ガバナンス」ほか

グローバリゼーションと私たちの生活のつながり

私たちが日ごろから接している食料や紙、スマートフォンなどの商品はどのような生産・流通プロセスを経て店頭に並んでいるのでしょうか。そのような商品や生産・流通プロセスの変化は各国の経済の発展とどのように関係しているのでしょうか。そもそも世界にはなぜ豊かな国と貧しい国があるのでしょうか。どうすれば貧しい国は豊かになることができるのでしょうか。また、開発途上国において著しい貧困や教育問題、あるいはエボラ出血熱や新型コロナウイルスなどの感染症や疾病の問題、さらには地球温暖化などの環境問題など、国際開発に関わる諸問題について、国際社会ではどのような考えに基づき、どのような取り組みがなされているのでしょうか。このように身近な生活や報道から垣間見ることのできる問題や疑問を少し羅列しただけでも、現代を生きる人々の生活がますますグローバリゼーションに規定されるようになってきていることがわかります。

私自身は、アジア諸国、とくにインドを対象にその経済発展パターンと社会変化を研究しています。インドといえば、ひと昔前には、日本の多くの人々にとっては、貧困やカーストといったイメージしかなかったように思われますが、インドもまた急速にグローバリゼーションに晒されて変化しています。よく知られているように、今ではIT産業が展開し、首都であるニューデリーにはこぎれいな地下鉄も走っています。この地下鉄には日本の海外援助が貢献しています。そのほか、新幹線構想や高速道路プランなど日本政府が協力しようとしている案件が今は目白押しです。もちろん、インドだけでなく他の開発途上国においても日本政府は援助を行っています。では、なぜ日本政府は国民の税金を用いてインドの地下鉄建設や他の開発途上国の様々なプロジェクトに協力しているのでしょうか。また、こうした援助の受け取り側である開発途上国側にとって援助は良いことばかりなのでしょうか。

私が担当している国際開発論や開発経済学の分野では、以上で少々紹介したようなグローバリゼーションに関わる事象を考察の対象とします。経済学の考え方が基本となりますが、総合政策学部での授業であることから、歴史学や社会学、政治学、法学などの視点も積極的に取り入れて、学問ネットワーク的なアプローチを心がけています。そして、日常生活のさまざまな事象がどうグローバリゼーションに条件づけられており、そのような前提のなかでどう考え、どう対処することが望ましいのか、受講生自ら考えられるようになることを目指しています。つまり、グローバリゼーションを理解しようと努力することは私たちの生の条件をより深く理解しようとすることであり、私たちの毎日の暮らしがどのような世界的な経済や政治、社会の網の目のなかにあるかをより広くまた深く理解することができれば、人生の質が高まると考えています。みなさんとともに学ぶ機会があることを楽しみにしています。