南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

藤本 潔

職名 教授
専攻分野 環境地理学、地形学、マングローブ生態学
主要著書・論文 『海面上昇とアジアの海岸』(共著 古今書院2001年)、"Belowground Carbon Storage of Micronesian Mangrove Forests" (Ecological Research, 1999)、『マングローブ―なりたち・人びと・みらい―』(共著 古今書院2003年)、『Mangrove Management & Conservation―Presnt & Future―』(共著 United Nations University Press, 2004)、『River Deltas:Types, Structures and Ecology』(共著 Nova Science Publishers, 2011)、『微地形学―人と自然をつなぐ鍵―』(共編著 古今書院2016年)
将来的研究分野 環境保全のための地理学的・生態学的研究
担当の授業科目 「エコシステム論」「人間と環境」「地球環境論」「環境調査法」「学外体験プログラムB」「総合政策プロジェクト研究」「環境地理学」

フィールドワークから環境を学ぶ

環境保全の重要性について異論を唱える人は、今やほとんどいないでしょう。にもかかわらず、地球上のあらゆる場所で自然環境の破壊が急速に進みつつあるのも事実です。皆さんは森を歩いたことがありますか?おそらくほとんどの人が「いいえ」と答えるに違いありません。そもそも、現代人は日常生活の中で森と関わる必要がないわけですから、よっぽど森に行くこと自体を目的としない限り足を踏み入れることはないでしょう。日常生活の中で森の恩恵に与った経験がないわけですから、森の大切さを知識としては知っていたとしても、その破壊の現状を他人事のように思ってしまうのではないでしょうか?

2016年度まで総合政策学部は愛知万博の会場計画で揺れ動いた「海上の森」のすぐ隣にありました。幸いにして会場計画は大きく変更され、そのほとんどが残されることとなりました。私の担当する「エコシステム論」では、まず「海上の森」を実際に歩くことから始めます。森を歩くことで、きっと今まで気づかなかった自然の大切さを感じ取ることができるでしょう。

マングローブ林での調査風景
(ミクロネシア、ポンペイ島にて)

私はここ30年ほど、東南アジアの国々や太平洋の島々に出かけては、マングローブ生態系の成り立ちと役割について、地形学的、生態学的に調べてきました。自然のメカニズムを知らずして生態系の保全策を考えることはできないのです。また、そこが人間生活の場となっている以上、そこで暮らす人々の実態を知ることも必要です。マングローブ林は、今、存続の危機に立たされています。何百年、何千年という長い年月をかけて創られてきた生態系が、エビ養殖池の造成に代表される無秩序な開発で、わずか数十年という速さで失われつつあるのです。また、温暖化に伴う海面上昇の影響も現れつつあります。

机上の知識だけでは実効性のある保全策は立てられません。もちろん、基礎的な知識は必要です。教室で地球環境の現状や生態系のしくみについて学んだ後は、実際にフィールドに出て、自然のすばらしさを体験すると共に、その対極にある環境破壊の現状を自らの目で確認し、自然環境の重要性について認識を新たにする必要があります。総合政策学部で環境保全について本気で考えてみようじゃありませんか。