南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

鶴見 哲也

職名 准教授
専攻分野 環境経済学
主要著書・論文 "Does Trade Openness Improve Environmental Quality?" Journal of Environmental Economics and Management (共著); "Does Energy Substitution Affect Carbon Dioxide Emissions-Income Relationship?" Journal of The Japanese and International Economies (共著); "Decomposition of the Environmental Kuznets Curve: Scale, Technique, and Composition Effects” Environmental Economics and Policy Studies(共著)
将来的研究分野 ・経済発展と環境
・貿易と環境
・望ましい環境政策
・生物多様性
・森林
・主観的幸福度
担当の授業科目 「環境経済学」、「生命と環境(経済と環境問題)」、「経済政策論」他

経済発展と環境

経済発展と環境の関係性については「環境クズネッツ曲線仮説」が有名です。この仮説は、「経済発展の初期から中期段階においては経済成長に重点が置かれ、汚染水準は経済成長に伴って悪化する。しかし、経済発展がある水準を超えると、環境を守りたいという意識が強まり、環境政策の実施あるいは環境技術の開発・導入等が行われ、汚染水準が低下し始める」という仮説です。すなわち、横軸に所得、縦軸に汚染水準を取った時に、両者の関係はU字を上下逆にした、逆U字型の曲線を描くという仮説です。

この分野の先行研究の蓄積は大変多く、1990年代から膨大な研究が存在しています。先行研究の結論は「水質汚染、地域的な大気汚染等の環境指標については環境クズネッツ曲線が成立しやすい。しかし一方でよりグローバルな環境指標、たとえば二酸化炭素(地球温暖化の問題)やエネルギー使用量(資源枯渇の問題)については仮説が成立しない」というものです。これはすなわち、健康被害が自分自身に及ぼされる危険性が高いほど汚染削減のインセンティブが働きやすいという傾向、そして将来世代に影響が及ぼされる問題についてはまだまだ問題解決のインセンティブは小さいという傾向が存在するということになるでしょう。

ただ、上記の研究は所得と汚染水準の関係に注目をしており、経済発展を「所得」という代理変数だけで捉えています。当然のことながら、経済発展によって変化するものは所得水準だけではありません。経済発展によって変化する所得以外のその他の重要な要素についても考慮に入れた研究が必要になるでしょう。たとえば、所得水準だけでなく、経済規模の影響というものもあるかもしれません。一国の経済が世界経済に及ぼす影響が大きいほど、その国の環境に対する取り組みには責任が生じてくる可能性があります。たとえば、中国は所得水準は日本より小さいですが、経済規模では日本を超える段階にまできており、環境に対する取り組みに責任がおのずと生じてきています。あるいは産業構造が変化していく可能性もあります。通常、経済発展に伴って労働集約的な産業(農業等)と資本集約的な産業(製造業等)の一国における割合は変化していきます。汚染水準はこうした産業構造の特徴によっても変わってくるでしょう。あるいは、二酸化炭素については、同じ所得水準の国が二つあったとしても両国が用いている1次エネルギーの構成は異なるため、水力や原子力といった二酸化炭素排出への影響が小さいエネルギーを用いるほど二酸化炭素排出量は少なくなります。以上のような、所得以外の重要な要素を考慮に入れ、また、先行研究の統計的な手法をより改善させることで、「経済発展と環境」の関係性をより説得力のある形で示していくことがこのテーマの目指すところです。

キーワード:経済発展と環境、環境クズネッツ曲線仮説