南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

三輪 まどか

職名 教授
専攻分野 社会保障法
主要著書・論文 単著『契約者としての高齢者』(信山社、2019年)、共編著『変わる福祉社会の論点〈第3版〉』(信山社、2021年)、共著『トピック社会保障法2022〔第16版〕』(不磨書房/信山社、2022年)
将来的研究分野 高齢者の自己決定を支える法制度
担当の授業科目 「市民生活と法」「人権政策論」「法学」「法と人間の尊厳」

法制度を通じて社会を見、自分に何ができるかを考えてみよう。

皆さんが大学に入学してから約4年の間に、「私はこんな会社に入って、幸せな家庭を築きたい」とか、「私は生きるために働いて、趣味を満喫したい」といった、人生のプランを立てたり、自分なりの目標や夢を持つと思います。でも、景気が不安定でリストラされたり、事故に遭ったりするかもしれません。働けなくなって生活できなくなる、そんな状況になったときに、あなたが人間らしい生活を送ることができるよう、守ってくれる制度があります。それが社会保障制度です。社会保障制度は、私たちが生まれてから死ぬまで、私たちに寄り添う制度なのです。たとえば、皆さんが生まれると、1歳半児健診や3歳児健診が行われ、順調に育っているかどうかの検査が義務づけられています(母子保健法)。働きはじめて、もしリストラに遭ってしまったら、次の職が見つかるまでの一定期間お金をもらえます(雇用保険法)。事故にあって障がいが残ったりすれば、障害年金というお金がもらえ(国民年金法)、生活するために必要なサービスを受けることができます(障害者総合支援法)。介護が必要な状態になれば、介護サービスを受けることができます(介護保険法)。

こうした社会保障制度を根底から支えているのは憲法です。人が人たるに値する生活(健康で文化的な最低限度の生活)を営む権利を定めているのが憲法25条であり、人が自分の思うように生きることを実現、追求する権利を定めているのが憲法13条です。そして、憲法25条2項では、そうした権利を実現すべく、国は社会福祉・社会保障を推進していくために、法令によって制度を設計し、現実のものとしていく責務があるとされています。憲法に基づいて、上記に掲げたような種々の法律が制定されるのです。法律に基づき制度を実際に動かしていくのは、私たちにとって身近な市区町村や都道府県であり、私たちはより具体的になった権利に基づいて、種々のサービスや必要なお金(給付)を求めることができます。

社会保障制度を学ぶためには、上記の憲法、種々の社会保障にかかわる法律のほか、国と市区町村・都道府県との間のルール、行政と私たちとの間のルールを定めた行政法や、私たち一般人の人の間のルールを定めた民法など、たくさんの法律を理解する必要があります。ときに難しいと感じることもあるかもしれませんが、私たちが生きていく上で必要な知識であり、また賢く生き、自分らしく生きるために必要な知識でもあります。

とはいえ、実際には、今の社会保障制度だけでは不十分な点がたくさんあり、必ずしも私たちに完璧に寄り添う制度とはなっていません。また、「こう生きたい」と思っても、それを踏みにじられることもあります。私自身の研究テーマは、特に高齢者や障がいのある人や女性など、いわゆる「脆弱な」立場にある人が自分らしく生きるために、どのような制度が必要か、また、行政はどのような制度を設計し、運用していけばよいかを考えることです。考えるだけでは限界もあるので、2021年から聴覚に障がいのある人たちの情報保障のしくみである「要約筆記」の勉強もはじめました。皆さんも、自分が暮らしている地域や社会に目を向け、観察し、その人たちのために、行政がすべきことを一緒に考え、私たちができることを実践していきませんか?